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  <title type="text">信じてる</title>
  <subtitle type="html">西門総二郎ｘ牧野つくし</subtitle>
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  <updated>2018-05-18T00:38:41+09:00</updated>
  <author><name>boa</name></author>
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    <published>2018-05-18T17:04:55+09:00</published> 
    <updated>2018-05-18T17:04:55+09:00</updated> 
    <category term="信じてる" label="信じてる" />
    <title>信じてる　７９（最終回）</title>
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      <![CDATA[<meta http-equiv="Content-Style-Type" content="text/css" />
<title>shinnjiteru79</title>
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<p>79. 最終回<br />
<br />
―　3年後　－<br />
<br />
白く霞がかった空の下、淡い桜色に染まる吉野山。<br />
<br />
吉野駅から程近い西門家別邸に来る度、この場所がどんどん好きになっていく。<br />
廊下からの眺めは、茶会行事が開催されるだけあり、見事な吉野山を見渡せる。<br />
<br />
<br />
谷底から尾根へ、例年通り、見頃の桜で染まる大きなキャンバス。<br />
その豪華絢爛なダイナミックさに初めて感動したのが一昨年（おととし）。<br />
「約束の場所に連れてってやるから。」と誘われたあの日、ちゃんと覚えてくれてたことに、胸がキュンとした。<br />
<br />
以来、京都－奈良間は近いから、ドライブがてら来るようになり、とりわけ、桜の季節は楽しみで、五感が気持ちよく刺激されるのがとてもいい。<br />
<br />
<br />
霞の向こう、山に咲いたカリフラワーみたいにボコボコした外形を、目を細め、その桃色のシルエットがよりよく見えないか眺めていると、馴染んだ香りが鼻先を掠めた。<br />
<br />
右隣に立ち止まる気配を感じ、知らずに頬が緩む。<br />
<br />
振り返らず、空に向かって笑みをこぼすのは、その主がわかってるから。<br />
漂う香りが誰のものなのか。<br />
<br />
廊下に二人並び、山を眺める、隣は何を想い眺めてるのだろう？<br />
私は話しかけるのを放棄し、口を噤むことにする。<br />
二人静かに鑑賞する時間（とき）、一人で観るより豊かに感動が胸中に広がってく。<br />
<br />
その涼し気な瞳には、きっと満開の桜が映っていて、頭の中では、過去の茶会を投影してるか、もしかすると、俳句を練ってるかもしれない。<br />
コンピューターが作動するように、脳内で複雑にシナプスを繋ぎ、記憶力と創造力を働かせていることだろう。<br />
<br />
うららかな春の日光に照らされ、遠くを見遣り・・・音のない静けさに包まれながら、そっと寄り添うように、溶け込むように眺めていた。<br />
<br />
<br />
なにせ、あの夥しい数。<br />
あのボコボコの一株が一本の桜の木なら、一体あそこには何本の桜が植わっているのだろう？<br />
<br />
桜木の途切れは不明瞭かつ不揃いで、無遠慮に咲き乱れてるくせ、山全体に秩序に似た上品さが漂い、人をぐいぐい惹きつける。<br />
胸の中が爽やかな感動で満たされ、溜息と共に感嘆するしか言い表せない<br />
その感動を言葉に閉じ込めるのは困難な作業だ。<br />
<br />
近くで見れば、繊細で、ほんのり淡くピンクに色づく花弁の競演が、山脈を登るような威勢で幾重にも重なり、薄桃色が大きく膨らむと、伝説の桃源郷か？と美を誇らんばかりの盛観な風景に変わる。<br />
思わず、瞬きも忘れる。<br />
<br />
何があっても、この花盛りが色あせて見えることなんてないと思う。<br />
日本人が惹きつけられずに止まない、大好きなJapanese Cherry。<br />
私は『桜花爛漫』の雄姿を愛でるのに時間を忘れていた。</p>
<p>「上千本の方、満開だな。」<br />
<br />
「うん・・・すっごいね。」<br />
<br />
「そろそろ、あいつら来る頃じゃねえか？」<br />
<br />
「えっ、もうそんな時間？」<br />
<br />
茶道西門宗家が生家、何不自由なく育った優男は現在、私の旦那様。<br />
超美形、スマートな振る舞いを振りかざし、眉根一つで女の子を夢中にさせてきた。<br />
それが、夜遊びもせず品行方正な夫に変わり、そのギャップが目立って不思議に思う瞬間がまだ消えない。<br />
<br />
運命のいたずらだったのか・・・にしても、人は、逆風を追い風に変え、切り開く力を持っていると教えてくれたのも、この男。<br />
天職だと思えた茶道界から離れ、歴史文化を教える日々を充実させているのだから。<br />
<br />
事故当時、Ｆ４の悲劇はビッグ・ニュースで、人々の記憶に深く刻まれたらしい。<br />
不幸から再起をつかんだサクセス・ストーリーは世代を超え関心を呼び、大手教育機関に限らず、民間レベルの講演依頼も多い。<br />
<br />
<br />
バレンタインには、自宅宛に数え切れない数のチョコが届く。<br />
誕生日には、手作りの思いを込めたバースデー・カードやら届く。<br />
手渡しでは受取らないので、そうするしか他になく送って来るのだろうけど。<br />
<br />
そんな事は、ニュースの一つとしてさらりと流し、書斎にこもり、仕事の続きや本を開く総。<br />
<br />
物凄い努力家なんだと、惹かれ始めた頃から気付いていた。<br />
切磋琢磨が趣味のように、前へ進む姿勢を崩さないのは、今に始まったことじゃなく、一生、受験勉強が続くみたいで、息苦しくない？<br />
時に理解を超え、痛々しく映る時もあった。<br />
その後姿を支えてあげることしかできず、役に立ちたい、力になりたいっていつも思ってる。<br />
<br />
けど、ちゃんと良い奥さんできてるかな。<br />
<br />
総はマイナスをチャラにして、どんどん磨きがかかってるのに。<br />
年々、憂いを帯びて格好よくなる気がするのは、夫バカなのだろうか？<br />
着物だって、めったに着ないのに、正絹の衣擦れの音にヤキモチ妬きたくなるくらい似合ってる。</p>
<p>「・・・願わくは花の下にて春死なん　そのきさらぎの望月の頃。」<br />
<br />
ボソリつぶやく総。<br />
その意味にギョッとするや、肩に置かれた大きな掌から温かい体温が伝わり、勢いよく振り返った。<br />
<br />
「そんな歌・・・。」<br />
<br />
「ん？西行の有名な歌。<br />
聞いたことあるだろ？」<br />
<br />
「うん・・・けどぉ。」<br />
<br />
「一雨でパッと散ってしまう儚さ。<br />
それと、仏教の無常の教えが合わさってる。<br />
&ldquo;散る&ldquo;不可抗力が痛いよなぁ、見事に咲く桜ほど。<br />
でも、散るからこそ、狂ったように人が集まってくるわけで。」<br />
<br />
「もうっ・・・・詠むんなら、死ぬとかじゃなくて、楽しいのが続くようなのを詠んでよ。」<br />
<br />
「俺は死んだりしねえから、心配すんなって。」<br />
<br />
悪かったという風に、ふっと口元を緩め、微笑んでくれる。<br />
<br />
&ldquo;西門さん&rdquo;から&ldquo;総&rdquo;と呼び方が変わったのはいつ頃だったろうか・・・多分、&ldquo;パパ&rdquo;と呼び始めたのと同時期くらいだったと思う。<br />
<br />
「明後日は雨らしいぞ、後、もって数日。」<br />
<br />
「今は考えないよ。」<br />
<br />
「そりゃ、賢明。」<br />
<br />
総は肩に置いた手を下ろし、一歩後ろに下がると、私を下から上へあからさま眺めた。<br />
<br />
「その着物、やっぱし似合うじゃん。」<br />
<br />
「ありがと。」<br />
<br />
「明るくなるわ。」<br />
<br />
「花見客に暗い人なんていないよ・・・クスっ。」<br />
<br />
そういうリアクションは想定内。<br />
以前、「西門流花見の会」でお義母からお借りし、そのまま譲って下さったピンク色の付下げを着ると、皆から褒められる。<br />
<br />
今日は、Ｆ３とＴ２を招いて、吉野の春望を楽しもうと企画しており、旧友達もわざわざ来てくれる。<br />
ずっと思い描き、念願叶った特別な日。<br />
<br />
『一座建立（いちざこんりゅう）』<br />
<br />
以前、総がよく口にしていた言葉がある。<br />
亭主と招かれた客の心が通じ合い、気持ちの良い状態になることを言うらしい。<br />
<br />
吉野の桜を見ながら、心を通わせあえたらどんなに素敵だか想像しただけでワクワクする。<br />
<br />
私の我侭を総は聞いてくれた。<br />
もてなすことが好きなのを知ってるから、リフレッシュになると思ったから、ここは一つ、どうしても！と総に亭主を頼んだ。</p>
<p>お手伝いの人が旧友達の訪問を告げに来て、揃って皆を歓迎した。<br />
<br />
「おうっ、来たか。」<br />
<br />
「いらっしゃい～。」<br />
<br />
「うっす！」<br />
<br />
「つくしぃ～来たよ～！」<br />
<br />
「お邪魔しま～す。」<br />
<br />
「おうっ。」<br />
<br />
「（ニコリ）。」<br />
<br />
美作さんは３歳の息子を抱きかかえながらの登場で、後ろには可愛い奥さんも連れて居た。<br />
道明寺も類も、滋さんも桜子も、いまだ独身貴族。<br />
パッと見、それぞれが第一線で頑張る人の煌きを放ち、吸引力を感じる。<br />
ノッてる人は、華々しい。<br />
そんな友人を見るのは、とっても安堵し、嬉しいことだ。<br />
<br />
まずは大広間へ通し、部屋の障子を全て開け放ち、見事な吉野山を堪能してもらうことにした。<br />
<br />
<br />
「ま～きの、これお土産。」<br />
<br />
穏やかで静かに響く声は、類。<br />
手には、スミレ色のリボンがかかったベイビー・ブルーの小箱を乗せ、にこやかに私に差し出している。<br />
<br />
「何？開けていい？」<br />
<br />
蓋を開けると、パステル系クレヨンセットのような、愛らしい果物の砂糖漬けが並んでいた。<br />
<br />
「可愛い～、これ、お菓子よね？<br />
フランス語だね・・・行ってきたの？」<br />
<br />
微笑みながら、軽く頷く懐かしい仕草。<br />
すると、ふいに英徳の非常階段で和んだ場面が浮かんで、胸の中に、爽やかな風が吹き込んだ。<br />
<br />
でも、類は年齢にあった貫禄をつけ、私の大好きな微笑をそのまま、大人と青年が同居するセクシーな男になっている。<br />
綺麗な微笑み・・・きっとモテモテで仕方ないだろうな。<br />
<br />
<br />
「可愛いお店だったから、入ってみた。」<br />
<br />
「ありがとう～、類。」<br />
<br />
「うん。」<br />
<br />
嬉しそうな類を見ると、こっちまで嬉しくなるから、とびきりの笑顔を作ってみた。</p>
<p>「おい、亭主の前で、じゃれるな！」<br />
<br />
「いいじゃん、牧野が嬉しそうにしてるんだから。」<br />
<br />
「牧野じゃない、とっくに西門だ。<br />
神様の前で俺らが誓ってるとこ、お前、見ただろうがー。」<br />
<br />
「総二郎・・・薬の副作用出てる？怒りっぽくなった。」<br />
<br />
「・・・ップ、もう薬なぞ、飲むか。<br />
普通の注意だ、これは～。」<br />
<br />
類は別にしても、総は類相手にいつもエラソーだ。<br />
気が許せる相手だとしても、類だって花沢商事の次期社長だよ、後で注意しておかないと。<br />
<br />
「つくし、滋ちゃんも持ってきたよ！<br />
マカロンとバームクーヘン！！」<br />
<br />
「嬉しい～、ありがとう～。」<br />
<br />
美作さんの奥さんも、ﾎｰﾑﾒｲﾄﾞの焼き菓子詰め合わせを持ってきてくれて、今日はお菓子三昧になりそう。<br />
<br />
美作さんの膝に乗っていた長男は、一人で正座しなおし、目の前に置かれたオレンジジュースのストローを口にくわえた。<br />
小さな肩幅、小さな口元・・・だけれど、焦茶色の瞳を受け継ぎ、なんとなく美作さんジュニアになってる。</p>
<p>「司、お前、見合いしたんだろ？」<br />
<br />
総が道明寺に尋ねた。<br />
<br />
「おう。」<br />
<br />
「んで？」<br />
<br />
「んで？って？・・・まだ、１回会っただけだし、先はわかんねえ。」<br />
<br />
「道明寺さん、それって、また会うってことですか？？？」<br />
<br />
桜子が身を乗り出した。<br />
<br />
「脈ありってか？」<br />
<br />
今度は美作さんも。<br />
<br />
道明寺は廊下とお部屋の境目で、鴨居に両手を置き、伸びをしながら、重そうな口ぶりで答える。<br />
<br />
「わっかんねえ・・・まあ、面倒くさくなけりゃ、会うことになるだろ。」<br />
<br />
「見合いは、結婚した後、堂々と恋愛できるのが良い所。<br />
特に、恋愛経験の浅い奴にはお勧めだぜ。<br />
なあっ？」<br />
<br />
横に座る奥さんに、微笑みながら目配せする美作さん。<br />
奥さんと仲良いのが伝わってくる。<br />
<br />
<br />
「うっせー、誰が恋愛経験薄いだとぉ？！<br />
黙って、飯食ってるだけだぞ。<br />
エスパーでもなけりゃ、何考えてるかわかんねえだろが。<br />
だからだよ。<br />
救済される立場でもねえし、焦ってもねえし、時間無けりゃ、縁が無かったってことになる。」<br />
<br />
「へ？牧野以外の女を人と思わず、礼儀知らずだった司がねえ～。」<br />
<br />
「司、敷かれたレールって、毛嫌いするもんでもないぞ。<br />
俺みたいに、フェンスの外側からのぞく立場になると、羨ましい限りだ。」<br />
<br />
「・・・・・んなもん、とっくにわかってる。<br />
道明寺に生まれたからこそ、このポジションだ、だがな、このレールをもっと太く強固にしてやる、お袋をひっくり返らせてやるよ。」<br />
<br />
「司、カッコイイ！！」<br />
<br />
<br />
本当に格好いいと思うよ、道明寺・・・思わず、滋さんにつられそうになる。<br />
巻き毛はあいかわらずクルクルしてて、触ると意外に柔らかいのを知ってる。<br />
精悍な表情から、野獣の頃のような強さも感じるし、円滑に仕事を回す緻密さも感じ取れて、立派で、男らしくて、本当にホレボレするよ。<br />
<br />
<br />
「ッツ・・・ところで、類、お前は見合いしないのかよ？」<br />
<br />
「結婚の？<br />
話は来てるみたいだけど、興味ない。<br />
今は仕事が楽しいしね。」<br />
<br />
「へえ～、あんた達、大人になったもんだねえ・・・クスッ。<br />
&ldquo;未来は墓場～&ldquo;みたいな顔して、アレルギー反応バリに反発してたのにぃ。」<br />
<br />
「本当ですよ、変わるもんですよね。<br />
道明寺さんは、大暴れしてたし、花沢さんは、ずっと寝てたし、西門さんや美作さんは女遊びし放題で。」<br />
<br />
桜子が溜息まじりに言う。<br />
<br />
「兎に角、俺は現状に満足・・・だな。」<br />
<br />
「おう、悪くない。」<br />
<br />
「まあね。」</p>
<p>その時、襖がスーッと開いて、皆の視線が下のほうに集まった。<br />
小さな男の子が、その円らな目に涙をいっぱい溜めて立っていた。<br />
自分の背丈より高い位置の引き手に手を置いたまま、口を一文字にじっと前を見据えてる。<br />
<br />
「あら？起きた？」<br />
<br />
私と目が合うと、人の多さに戸惑いつつ、タタタっと小走りでこちらにやって来た。<br />
抱き上げ、涙を拭いてあげる。<br />
<br />
「信一郎、こっちおいで。」<br />
<br />
総が両手を差し出す。<br />
<br />
「ほら、ママのお気に入りの着物、涙で濡らしたら怒られるぞ。」<br />
<br />
パパが大好きな信一郎は、寝起きでも、パパＯＫですんなり身を預ける。<br />
だから、お願いして、その長い腕に託した。<br />
<br />
「結局、Ｆ４全員、敷かれたレールが歓迎だったんじゃないの？<br />
そういえば、総もレール嫌じゃないみたいだし・・・ね？」<br />
<br />
「俺がか？」<br />
<br />
「うん。」<br />
<br />
「総二郎は、せいせいしてるんじゃねえのかよ？最近の良い噂は耳に入ってくるぜ。」<br />
<br />
「・・・まあ・・・そうなのかもな。」<br />
<br />
「クスッ、この人ね、信一郎にお茶を教えてるんだよ。<br />
自分が小さい頃されたように、くり返し、教えてるの。」<br />
<br />
「あれは、おままごと、遊びな、遊び。」<br />
<br />
「おっ、将来は第１７代目の家元にする気か？」<br />
<br />
「あんなぁ～、そんなつもりあるわけないだろ。<br />
でも、万が一、茶に携わることになれば、役に立つかもと思ってな。<br />
茶道が世襲制なのには意味があって、無意味な内紛を排除するだけでなく、世界観を身につける時間をそれだけ持てるって事だから、小さい頃から始めるにこした事ないわけ。」<br />
<br />
「総二郎、素直に認めれば？息子には継いで欲しいんでしょ？」<br />
<br />
「息子に託す！か、その手があったな？！総二郎！」<br />
<br />
類と美作さんに突っ込まれ、突っ慳貪に言い返す総。<br />
<br />
「こいつを、俺の人形にさせるつもりはねえから・・・。」<br />
<br />
「でもさ、総・・・いいよ、私。<br />
信一郎が、お茶を好きな子なら、それでも。」<br />
<br />
「先輩も、レールに乗せるのに賛成ってことですか。」<br />
<br />
「・・んん～、本人次第よ！周くんだっているんだし！」<br />
<br />
「・・・お前ら、親バカか。」<br />
<br />
「ちょっとぉ！」<br />
<br />
<br />
道明寺をにらみつけると、予想外に優しい眼で見下ろされていて、思わず、じっと見つめ返していた。<br />
<br />
親戚の叔父さんみたいに、ちょっぴり遠くに見えた道明寺。<br />
今までの位置から少しだけズレて、なんだか寂しいような変な気持ち。<br />
けれども、それがこれからの新しい関係であり、きっと長く続いていくのだと感じた。</p>
<p>「さあ、そろそろ、始めるか～。」<br />
<br />
「うん、始めよう！」<br />
<br />
総の表情は、すがすがしく、嬉しそうだ。<br />
子供達をお手伝いさんにお願いし、皆でゾロゾロ、廊下を移動する。<br />
<br />
<br />
私の前には総、後ろには道明寺。<br />
総は私の手をとり、固く握りながら前を歩いて行く。<br />
私はその後姿を見つめながら、必死でついていく。<br />
<br />
ふと外を見れば、庭にも桜の木が数本あって、それらは花びらが大方散った老木だった。<br />
<br />
真黒焦げの幹からは、黄緑色の新たな生命が生まれ、老いてなお、なんて瑞々しい色を作り出せるのか感心する。<br />
目に鮮やかに映る自然の摂理は、本当にすごい。<br />
もう、すぐそこに初夏が待っている。<br />
そしたら、蝉が地上に這い出て、ここもにぎやかな景色に変わるだろう。<br />
<br />
一陣の風が吹き、残った花びらがパラパラと風に舞い散った。<br />
これから、桜木は日に日に緑を濃くし、奥の方では来春の準備が始まる、それは回転車のように命ある限り続いてく。<br />
<br />
私と総の未来が、この先、どう回っていくのか誰もわからない。<br />
けれども、ずっと側に居て、こうして手をつないで歩こう。<br />
<br />
<br />
幸せの形があるのなら、きっとこうした気持ちの一瞬だ。<br />
総のリードでずっとダンスを踊っていたい。<br />
総の歩みにピッタリ合った自分の歩み。<br />
二人三脚みたいに、ステップを間違えないよう、呼吸を合わせるのがいいのかも。<br />
試行錯誤しながら、上手くなっていけばいい。<br />
<br />
<br />
「お前、何、ニヤケてるんだよ。気持ちわる～。」<br />
<br />
「はあっ！？///。」<br />
<br />
ケラケラ笑いながら、また前に向きなおる笑い声が消えぬうち、手を離し、もう一度握りなおす。<br />
<br />
急に空気に晒された総の指は、思いを察知してくれるはず。<br />
<br />
<br />
リングが光る左手薬指。<br />
特別の一本だけを、５本の指ですっぽり包み込む。<br />
強く、しっかりと・・・自分の爪まで巻き込んで。<br />
<br />
思いの丈をぎゅっーと閉じ込めて、そして、ステップを前へ踏み出した。<br />
<br />
<br />
完　 <br />
<br />
<span style="color: #fc6630;" color="#fc6630"> ***<br />
総ｘつく長編、お付き合いありがとうございました。<br />
一年半に及ぶ長い連載でしたが、ついに書き終わってしまいました。<br />
いかがでしたか？少しでも、楽しんでいただけましたでしょうか？<br />
リアクションをいただければ嬉しいです。<br />
Boaの感想はblogに書いておこうと思いますので、ご興味ある方はお越しください。<br />
なお、真面目に書いたお話ですので、面白半分・不快なコメントは躊躇無く削除させていただきます。<br />
Boa<br />
</span></p>]]> 
    </content>
    <author>
            <name>boa</name>
        </author>
  </entry>
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    <id>shinnjiteru.side-story.net://entry/78</id>
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    <published>2018-05-18T17:03:24+09:00</published> 
    <updated>2018-05-18T17:03:24+09:00</updated> 
    <category term="信じてる" label="信じてる" />
    <title>信じてる　７８</title>
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<title>shinnjiteru78</title>
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<p>78. Florianopolis, Brazil<br />
<br />
「な？折角だし、どうよ？」<br />
<br />
「英語ならまだしも、ポルトガル語でしょ？マリンスポーツなら沖縄でもいいじゃん。」<br />
<br />
「日本の裏側だぞ、なかなか行くこともないだろ。<br />
ちょうど、新婚旅行にピッタシじぇねえ？」<br />
<br />
「お友達の別荘って・・・そこ、治安とか大丈夫なの？」<br />
<br />
「悪いようには言ってなかったぜ、むしろ、世界中で一番お勧めの場所だってさ。<br />
気が進まねえか？」<br />
<br />
<br />
<br />
新婚旅行の行き先候補として出てきたのが、聞いたこともないブラジルのどこか。<br />
南米ではかなり有名な観光地らしいけど、だからと言って行きたくなるもんでもなく、「なんでそんな所へ？」って感じが拭えない。<br />
ハワイでさえ行ったことないんだから・・・私。<br />
<br />
なんでも、ブラジル国籍の教授から、「別荘を使ってくれ。」と何度も誘われているらしい。<br />
<br />
「日本人はブラジルを知らなすぎて、悲しいんだってさ。<br />
マリンスポーツあり、おいしいフードあり、きれいな水と空気、大自然もありで、ハワイなんぞ比べ物にならないから行ってこいって。<br />
あんだけ言うんだから嘘でもねえだろ。」<br />
<br />
「で、鵜呑みにして西門さんは乗り気なんだ？」<br />
<br />
「行ったことねえし、面白そうじゃん。<br />
まだ身軽だし・・・今のうちに、なっ。」<br />
<br />
「でもさ、パンフレットは無い、ガイドさんもいないんでしょ？<br />
下調べはどうすんのよ？&ldquo;地球の歩き方&ldquo;とかも無さそうじゃん。」<br />
<br />
「泊まる所があれば、何とかなるもんだって。」<br />
<br />
「はぁ～。」</p>
<p>てなわけで、日本から丸一日かけてやって来たのがここ、florianopolisという島と大陸の一部からなる都市で、州都だけあって、文明もしっかりとした立派な場所だった。<br />
私の頭の中では、もうちょっとジャングルっぽいイメージだったから、想像と実像のギャップに目をみはる。<br />
<br />
国際空港を抱える観光都市。<br />
教育・経済とも発展した、&ldquo;ブラジルで住みたい都市Ｎｏ．１&rdquo;に挙がるらしい。<br />
<br />
さすが、南半球、２月だというのにＴシャツ一枚で過ごせて快適。<br />
そして、サン・パウロなどの大都市と違い、治安はすこぶる良く、海外にいる緊張感はどこかへ消えた。<br />
<br />
<br />
有名なサーフィンのチャンピョンシップ・ツアー・トーナメントが行われる程、波に定評あるビーチがたくさんあり、若いサーファー達がウヨウヨいて、ヨーロッパやアメリカからの白人男がボード片手に歩く姿はめずらしくもない。<br />
日本人はすごく少ないけれども、バカンス中の若い観光客の多さにビックリした。<br />
<br />
ジェット・スキー、ウィンド・サーフィン、パラセール、ダイビング等なんでもござれ。<br />
ツアーデスク案内は至る所にあり、心の赴くまま、身体一つで申し込める気軽さが、この都市の観光天国度合いを物語っている。<br />
<br />
こんなに整備された観光島だと思わなかったし、気付けば早くも４日目を迎えていて、時間が経つのがあまりに早く、驚いてしまう。</p>
<p>「西門さん、結構、焼けたね。」<br />
<br />
西門さんは全身日焼けして、特に鼻の頭と肩は少し赤らんでいる。<br />
<br />
「初日から日差し、きつかったもんなあ・・・ったく、やっべえよな。<br />
アフターローション、肩に塗ってくれるか？」<br />
<br />
「もちろん、べったり塗ったげるよ。」<br />
<br />
私は口元を緩ませながら、カバンの中から男性用ローションを取り出し、ブチュリと中身を押し出して、熱を持ったその大きな肩に優しく触れた。<br />
<br />
「うわっ、もう皮がめくれてる～、痛そ。」<br />
<br />
「っ・・・冷て～。」<br />
<br />
「ゴメン。ゴメン。<br />
西門さん、気持ちはわかるけど、歳も考えなよ。<br />
シミになるよ！シ・ミ！<br />
ちゃんと日焼け止め塗れば良かったよね、西門さんも。」<br />
<br />
本人も後悔してるらしく、苦々しそうに口を一文字にしている。<br />
角張った肩に茶色がかった液体を塗りこむと、キャラメルみたいに甘い匂いが広がって、こういう香りは旅行の醍醐味だと思う。<br />
<br />
「はい、完了！」<br />
<br />
カバンに手を伸ばしかけた所で、右手首を掴まれて、その指を西門さんの鼻先へもって行かれた。<br />
<br />
「ここにも、ついでに・・・優しくね～。」<br />
<br />
指先に残るローションを自分の鼻のテッペンにこすりつける西門さんは、ねだるように甘えた声色と瞳で楽しんでる様子。<br />
<br />
「つくし、美味しそうな匂いさせて。」<br />
<br />
「私じゃなくて、ローションの。」<br />
<br />
西門さんは手を離し、今度は両手を私の背中へ回して、軽く抱きしめてきた。<br />
<br />
「サンキュー・・・。」<br />
<br />
<br />
すっぽりと腕の中に包まれると、じんわり胸に広がってくる&ldquo;幸せ&rdquo;。<br />
<br />
そう呼べるひと時を、ここflorianopolisにきてから、屋内・屋外に関係なく、何度も感じさせてもらえてる。<br />
日本から遠く離れた開放的な空気のお陰かな。<br />
<br />
目の前には西門さんの鎖骨があって、すぐにも触れることができる距離。<br />
包まれる&ldquo;幸せ&rdquo;、そして、特別に、私だけに許された、彼に触れることが出来る自由を&ldquo;幸せ&rdquo;と呼ばず、なんて表現したらいいのか。<br />
<br />
キャラメルとコロンが体温で混ざり合い、なんとも甘く魅惑的な香りにラップされ、逃げる思考も動きも封じられる。<br />
さらに、優しく頭のてっぺんにキスを落とされ、もう一度、ギュット抱きしめられたら、もう、コロリと催眠術にかかる兎かひよこになってしまう。<br />
<br />
背中に置かれた掌が上下にさすり始め、腰へ、お尻へ伸びていき、さする力が意味を持ち始める。<br />
<br />
西門さんがまたその気になっているのに気付いた。<br />
<br />
<br />
「こんなことばっかして、キリねえな。<br />
いっそ、ここに別荘でも買っちまおうか？」<br />
<br />
「・・・もう、冗談よして。」<br />
<br />
頬から首筋にキスを始める西門さん。<br />
<br />
「いいじゃん、１回だけなら・・・carnivalは逃げねえよ。」<br />
<br />
「お腹もすいてるし・・・お化粧も、取れちゃう。」<br />
<br />
「そんなの直さなくていいって。」</p>
<p>到着の次の日に、一日中、日差しを浴びて、既に皮がめくれ、ﾎﾝﾄご愁傷様の西門さん。<br />
<br />
まず出かけたのは、小さな島へのボート・トリップだった。<br />
朝から夕暮れまでそこで過ごした。<br />
<br />
白いビーチと透明な海水。<br />
どこからか聞こえてくるサンバのリズムと気持ちよいそよ風。<br />
片手をあげるだけで、飲み物は何でも運んでもらえ、余計な干渉はない。<br />
それだけで、きれいに気持ちが入れ替わり、バカンス気分になるもんだ。<br />
お腹がすけば、コテージで軽食を食べ、シュノーケリングを少し楽しんだ後、木陰のハンモックに揺られ眠った。<br />
<br />
結婚式から新婚旅行をずらした理由は、西門さんが忙しかったせいでもあり、ようやく、はるばるやって来て、まずはスイッチが必要だと早速現地でツアーを申し込み、目論見どおり、上着を脱ぎ捨て、とたんに日本を忘れた。<br />
その結果がこの日焼け。</p>
<p>その次の日も私達は出かけた。<br />
砂丘でサーフィンみたいに遊ぶサンド･ボード体験だ。<br />
<br />
Florianopolisは海・川・森林・砂丘があり、自然を生かしたいろんなアクティビティーがいっぱいの巨大アミューズメント・パークみたいで、西門さんと私は、子供のように目を輝かせツアーを選んだ。<br />
<br />
<br />
<br />
「サンド･ボードってやったことある？」<br />
<br />
「無いけど、それでもいいぜ。」<br />
<br />
「脚、平気かな？」<br />
<br />
「体験程度なら、テキトーにやるから・・・つっても、つくしより上手く滑れるだろうし、心配無用。」<br />
<br />
日焼けした西門さんがニヤリと口角を上げると、白い歯がこぼれ出る。<br />
一瞬、ガムのＣＭのように爽やかな余韻を残すから、いまだにドキドキさせられ、照れ隠しに、あわててツアーのアクティビティー・リストを覗き込んだ。<br />
<br />
<br />
「///・・ねえ、西門さん・・・サンド・ボードって・・・&ldquo;雪の代わりに砂を、スキー・ウエアの代わりにビキニを、スノウ・ボードに代わるレジャー&rdquo;って書いてるよ。<br />
それなら、多少出来ると思うんだけど。」<br />
<br />
「じゃあ、決まり。申し込も。」<br />
<br />
白いポロにモス・グリーンの短パン姿の西門さんは、鼻歌でも出そうな調子で、私の肩に手を回し、早速、デスクに座るスマイル・ビューティーな女の人に声をかけた。</p>
<p>シャトル･ジープが砂丘に差し掛かると、景色は砂色の世界。<br />
視界の中、ショッキング・グリーンの派手なボードが、シャープなラインを描きながら、サーッと滑り落ちていくのが目に入る。<br />
バランス感覚バッチシ上手で、思わず目で追った・・・あんなに滑れたら、気持ち良いだろうな。<br />
スキー場でも気持ちよく滑る人がたくさんいた・・・スノボ感覚なら、何とかなるか。<br />
<br />
到着すると、小学生くらいの子供からおばあちゃんまで、ボードに乗って練習する人がいっぱいでワクワクし始めた。<br />
<br />
簡単なレクチャーの後、ボードを借り、滑り始める。<br />
西門さんはサーフィンさえご無沙汰なのに、すぐに乗りこなしていて、かつて致命的な重傷を負った人かと目が点になったよ。<br />
<br />
滑れるようになると、楽しくなってくるもの。<br />
けれど、滑り落ちると、また上まで歩いて戻らなければならず、それが体力を奪っていくのが難点だった。<br />
<br />
<br />
「・・っふー、よいしょっ・・・」<br />
<br />
「ほい、つくし、ボード貸せ。」<br />
<br />
一歩前から振り返り、手を差し出してくれる西門さん。<br />
<br />
「え？これくらい、持てるよ。」<br />
<br />
「いいから！」<br />
<br />
「いいってば！」<br />
<br />
「奥さん孝行させろよ！・・・今のうちに、恩売っとく。」<br />
<br />
真面目な表情から、一気に顔をニンマリさせて、奪うようにボードを取り上げた。<br />
それから、振り返って、ニヤリと口角をあげる西門さん。<br />
<br />
「・・っ！・・・じゃあ、甘えさせてもらっとくよ。」<br />
<br />
お陰で、思っていた以上に身軽になって、自然と元気も回復する。<br />
<br />
ボードを小脇に抱えた西門さんが前を歩き、私は離れないように背中を見つめて歩いた。<br />
格好よくて、その上、さりげなく優しい。<br />
ふと、そんな人と結ばれた自分の幸運に感謝せずにいられなかった。</p>
<p>ワンピの肩紐をずらそうとする手を掴んで止めた。<br />
<br />
「ねえ、今日こそ、この旅行の最大イベントでしょ？なら、行かなきゃね？」<br />
<br />
「っちぇ・・・じゃ、帰ってから続きな。疲れて眠りこけるなよ！」<br />
<br />
新婚旅行をこの時期にした別の理由が、ここで開かれるcarnivalのことを耳にしたから。<br />
この底抜けに明るいラテンの人々が集い、外からの観光客と相まって、煌びやかなパレードに酔い、食べて・飲んで・歌い・踊り・戯れるcarnivalは&ldquo;生の喜び&rdquo;であふれ、最高にエネルギッシュで、ゾクゾクするくらい楽しいらしい。<br />
<br />
<br />
まだ外は夕暮れにもなっていない。<br />
けれども、パレードの見物客で既に人が通りいっぱい溢れていた。<br />
レストラン、ビーチ、ホール、レゲエ・バー、ストリート、至る場所で開かれるらしいパーティー。<br />
流れで良さそうなパーティーに潜りこもうと西門さんは言っている。<br />
まずは、腹ごしらえとブラジル料理レストランへ入った。<br />
<br />
頼んだのは名物のシュラスコ（churrasco）で、鉄の串に肉を突き刺し、それをテーブルで好きなだけ削いでくれるというもの。<br />
それも、色んな種類があるらしく、次々持ってこられて愛想よくしてると、すぐにお腹いっぱいになってきた。<br />
<br />
<br />
「つくし、今日はよく食うな。」<br />
<br />
「ううん、お腹いっぱいなのよ、もう限界。」<br />
<br />
すると、また新たな串刺しがテーブルにやってきた。<br />
<br />
「Nao Obrigado」<br />
<br />
西門さんが言うと、ニコリと微笑みその店の人は立ち去った。<br />
<br />
「・・・No thank you って言った？」<br />
<br />
「そう・・・メイン・イベントの日に具合悪くなるのは避けたいだろ？」<br />
<br />
「うん。ありがと。」<br />
<br />
<br />
<br />
外に出ると、空は暗くなり、ビーチの方にも明かりが灯されていた。<br />
パレードの一行が見える。<br />
大音響を響かせながら、テレビで見たことあるリオのカーニバルのように、華やかでセクシーな衣装の女性が踊り歩いて行く。<br />
<br />
大きなフロートは、チームごとにデザインされて、垣間見るだけでも楽しく、さすがサッカー大国、巨大なサッカー・ボールとゴールを乗せたのもあった。<br />
<br />
熱気のせいか、ほろ酔いのせいか、気のせいかも知れないけれど、ちらちら男の人の視線を感じる。<br />
なんだか怖くて、西門さんの腕にしがみつきながら歩いた。<br />
<br />
ビーチに向かって歩いて行くと、通りにはアルゼンチン・タンゴを踊る美しいカップルのパフォーマーがいたり、全身真っ白に塗りたくり、ビクとも動かない大道芸人がいたり、刺激的な光景が続く。<br />
私達は、立ち止まり、輪の中に加わり鑑賞を楽しんだ。<br />
すっかり、祭りの楽しいムードに溶け込んでいる。<br />
<br />
歩き出すと、向こうからマッチョなタンクトップ姿の男の人が、熱い眼差しでこちらを見ているのに気付いて、西門さんの腕に頬をピタリとくっつけてみた。<br />
<br />
なのに、そいつからすれ違いざまにウインクされて、ビックリ。<br />
<br />
「ちょっと、あれ、見た？」<br />
<br />
「ああ・・・俺にくっついとけ。」<br />
<br />
案外、平気そうな西門さんの横顔を見つめながら、私はしがみつく手に力をこめる。<br />
<br />
ビーチが近づくと、アップビートな音楽が大きく聞こえ、それと共に、露骨に男の人の視線を感じ出す。<br />
それも、７人・９人・１０人くらい・・・たくさんだ。<br />
それだけじゃなかった。<br />
<br />
「Hｉ・・・chu !」<br />
<br />
「Como vai ?」<br />
<br />
掌をチラチラさせ、投げキスしてくる男の人もあらわれて、初めて、ヤバイ場所かもと不安がよぎる。<br />
パーティー会場と思われる場所で、その光景が目に飛び込むなり、思わずへたり込みそうになった。<br />
<br />
<br />
どこもかしこも上半身裸の男がたくさん、裸祭りのように異様な興奮状態でひしめき合っており、湯気でも上がりそうに会場は熱気ムンムン。<br />
みんな、男・・・男ばっかり。<br />
色目を送っていたのは、私ではなく西門さん目当てだったんだ。<br />
ここはゲイ・カーニバルなんだ。<br />
<br />
背の高い三人組みの白人男が現れ、西門さんに親しげに話しかけ、しきりに誘っている様子。<br />
<br />
充満しているタバコか何かの燃える匂いとお酒の匂い、陽気な笑顔と掛け声、足元から突き上げてくるベースの音に飲み込まれそう。<br />
そのうち、私の腕がするりと解かれ、間に潜り込んできた男達に西門さんが拉致されるように連れて行かれる。<br />
<br />
西門さんの言う言葉なんか、聞く耳持たない男達は獲物を前に、ハイ・テンションのまま、どんどん中央集団へ入っていく。<br />
「ちょっと待ってよ！！ちょっと！！！待ちなさいよ！！！」<br />
<br />
私は日本語でつっかかった。<br />
つかつかと歩み寄り、見上げるような男の人の腕を引く。<br />
<br />
<br />
「返して、私の大事な人を！」<br />
<br />
すると、「もう遅いから、ホテルに帰りなさい、子猫ちゃん」みたいな英語が聞こえ、むかついた。<br />
まるで、子供扱いされてるじゃん？<br />
<br />
私は西門さんの腕を引きむしり取ると、その隙間に割り込む。<br />
<br />
<br />
「私達は結婚してるんですから、愛を誓い合った夫婦なの！<br />
西門さんはあんた達なんかになびかないの！私にラブラブなんだからねっ！！<br />
汚らしい手を離しなさいよ！<br />
もう、西門さんから離れてって言ってるでしょ！<br />
どブス野朗！」<br />
<br />
<br />
そして、私は背伸びをし、力強く西門さんの両頬をつかみ、唇へとキスをした。<br />
唇から離れるやいなや、腕を引っつかんだまま猛ダッシュ。<br />
<br />
西門さんの様子を見る暇も無く、思い切り走った。<br />
<br />
聞こえてくる音楽が小さくなった所で、走るのを止めると、ゼーゼー息が苦しい。<br />
お酒を飲んだ後だし、結構、息がきれる。<br />
<br />
<br />
「アッハハハ・・ククっーー、面白れ～。<br />
日本語だからって、すごいこと言ってなかった？つくしちゃん。」<br />
<br />
「はあ？////もう～、必死だったんだから。」<br />
<br />
「ふっ・・・どブス野朗ね～ハハハッ。」<br />
<br />
「もう～、笑うな。」<br />
<br />
笑いながら私を抱き寄せて、耳元で囁く西門さん。<br />
<br />
「マジでラブラブ中だし。」<br />
<br />
顔を離し、上から見下ろす西門さんの瞳とぶつかる。<br />
黒いサラ髪の奥から、涼し気に見つめる瞳の奥に、誰もが虜にされる妖艶な色が浮かび、私はそれを逃さぬように、一身に受け止める。<br />
不意に角度がかわると、外灯に照らされて、その瞳から銀色の星屑がこぼれたような錯覚を覚え、思わず目が眩んだ。<br />
<br />
<br />
「つくし・・・愛してる。」<br />
<br />
「うん。」<br />
<br />
そっと唇を乗せられる。<br />
柔らかい唇の感触に神経を研ぎ澄ませながら、目を瞑った。<br />
<br />
遠くから聞こえる絶え間ない、ドン・ドン・ドンというリズム。<br />
まるで、耳元に打ち寄せているみたいな波の音。<br />
そして、オレンジ色にロマンチックにライトアップされたビーチ。<br />
<br />
「踊ろうか？」<br />
<br />
自然と体が左右に揺れて、わずかばかりのステップを踏み出した。<br />
砂がサンダルの中に入ってくる。<br />
けれども、不快さは無かった。<br />
<br />
「つくし、明日は何して過ごしたい？」<br />
<br />
「う～んとね、お土産かな。」<br />
<br />
「買い物かよ。」<br />
<br />
「&ldquo;FLORIPA&rdquo;って書いてるＴシャツ、いっぱい買って帰ろうよ。」<br />
<br />
小さく微笑み返す西門さん。<br />
<br />
「それに、まだ、アクティビティーも残ってるし。」<br />
<br />
私は笑顔で見上げた。<br />
<br />
「ここが気に入ったみたいだな。」<br />
<br />
「うん、意外だったけど・・・別荘貸してくれた教授さんに感謝しなきゃ。」<br />
<br />
「おう、良かった。一生、文句言われずに済むと思うと、俺も一安心だわ。」<br />
<br />
「こうやって、静かな二人だけのカーニバルも素敵・・・思い出になるね。」<br />
<br />
「このままエンドレスに続くかもな、つくしと一緒なら。」<br />
<br />
西門さんはステップを止めて、私の肩を抱いた。<br />
<br />
<br />
「バーでも行くか？喉乾いたろ？」<br />
<br />
「うん。」<br />
<br />
スーッ・スーッ・スーッ・・・二人同時に砂の上を歩き始める。<br />
<br />
すると、今度はビーチ・バーから流れてくるボサノバの音が大きく聞こえ始めた。<br />
どうやら、ノーマルなcarnival partyみたい。<br />
<br />
サヤサヤと囁くような優しい音色。<br />
エキゾチックで魅力的な音楽がバーの中から漏れでていた。<br />
<br />
西門さんといると、何もかもが楽しいし、ワクワクする。<br />
次から次へと、向こうから&ldquo;幸せ&rdquo;が訪れてくれるような気分だ。<br />
&ldquo;幸せ&rdquo;真っ只中、地上のパラダイスといわれる場所で濃密な時が流れている。<br />
<br />
『何を飲もうかな。』<br />
<br />
<br />
手をギュっと繋いでそんな事を考えた。<br />
どうせ、何を飲んでも美味しいに決まってる・・・天国みたいな場所だもん。<br />
<br />
つづく<br />
（次回は最終回）<br />
<br />
<br />
Ref : <a href="http://en.wikipedia.org/wiki/Florian%C3%B3polis">Wikipedia, the free encyclopedia </a><br />
<br />
</p>]]> 
    </content>
    <author>
            <name>boa</name>
        </author>
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    <id>shinnjiteru.side-story.net://entry/77</id>
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    <published>2018-05-18T17:02:29+09:00</published> 
    <updated>2018-05-18T17:02:29+09:00</updated> 
    <category term="信じてる" label="信じてる" />
    <title>信じてる　７７</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[<meta http-equiv="Content-Style-Type" content="text/css" />
<title>shinnjiteru77</title>
<link href="simple2.css" rel="stylesheet" type="text/css" />
<p>77.<br />
<br />
命あるものがせっせと冬支度に励む最中、俺達は結婚式を迎えた。<br />
<br />
永遠の愛を公約し、牧野つくしを生涯の伴侶にする。<br />
まずは、天気は快晴、秋晴れだ。<br />
淡い青空に浮かぶいくつもの鰯雲を見上げ、あの頃を回想してみる。<br />
<br />
学園を牛耳る飛ぶ鳥も落とす勢いの司を、当時、俺達さえも見て見ぬ振りしていたというのに、その司の顔に、しかも、学園内でキックを入れたブッ飛び女、牧野つくしとの出会いから。<br />
<br />
<br />
それはかなり衝撃的で、ぬるい学園生活には格好の話題だった。<br />
女を感じさせない言動を遠慮なくからかっていたのに、その女とこうした日を迎えるとは、人生わからないものだ。<br />
<br />
喜怒哀楽、どれをとっても太いスジが透けて見えた、どんな逆境においても私利私欲を持ち合わせない者のような選択を見せ、驚かせる。<br />
縁故も金もない高校生のくせ、頼もしい生き方していたやつ・・・羨ましく眺めていた。<br />
あんなに細い身体してるくせに、折れそうで折れないのが不思議でハラハラさせられて、いつの間にか守ってやりたい存在になった。<br />
<br />
見慣れた秋の雲でさえ、今日は最高に個性的な一筆書きに見えてくる。<br />
<br />
緑色から焦げ茶色へ変移する広葉樹木一帯、既に一枚の葉も残さない樹も見え、頬に当たる乾燥した風が秋気（しゅうき）を振りまき、&ldquo;秋めいた気分&rdquo;を誘う。<br />
<br />
実りの秋。<br />
西門家に縁ある神社で、日本古来から伝わるやり方で神前結婚式を行う。</p>
<p>俺は着付け専任の手によって平安貴族か？というような束帯を身につけ、最後の仕上げの冠を載せてもらうため、ほんの少し身体を屈めた。<br />
<br />
ふと、視界に周が見える。<br />
<br />
「おう、来てたのか？」<br />
<br />
「ちょうど今ね･･･けど、さすがの総兄も束帯姿は初めてだろうし、窮屈でしょ？大丈夫なの？」<br />
<br />
「まあな・・・周、今回は色々手数かけて悪かったな。」<br />
<br />
軽く首を左右に振る我が弟に、今日はある計画の仕込みを頼んだ。<br />
<br />
「後ろの裾は短くしてもらって、帯も簡略だし、平気だろ。<br />
心配なのは、あいつの方だ。」<br />
<br />
「ククッ、牧野さん、今頃、逃げ出したくなってるんじゃない？」<br />
<br />
「根性だけは人一倍だからなっ、やると言った以上、意地でも脱がないって・・・ッフ。」<br />
<br />
「総兄・・・あのさ、牧野さんのこと泣かせたら、マジでもう知らないからね。」<br />
<br />
「おう、わかってる・・・周、お前にも誓っとくわ。心配するな。」<br />
<br />
安心したような笑顔を見せる周三朗。<br />
こいつには、家元という重責まで背負い込ませた引け目もある。<br />
茶道家元継承者として、決意の前に払わなければならなかった犠牲、研究の断念、また、つくしへの真剣な恋心を知ってるが故、俺は真摯にならざるえない。<br />
<br />
人懐っこい笑顔を残し、立ち去る後姿に俺からもエールを送りたい。</p>
<p>親族控え室へ行くと、西門側の親族と牧野側の親族、それに旧友達の顔ぶれが揃っていて、パっと全員の視線が集まった。<br />
<br />
「うわ～、ニッシー、似合ってるよ！似合ってる！ほら、あの几帳の前で昼寝したら、平安貴族になれるよ。」<br />
<br />
―――　昼寝かよ？<br />
<br />
「ホントですね、源氏物語に出てきそう・・・稀代な色男、光源氏の君って感じですね。」<br />
<br />
まあ、自分でも良く似合うとは思ってる。<br />
つくしにも、俺を見て惚れ直すから覚悟しておくように冗談半分言ってある。<br />
<br />
「総二郎、お札に出てきそう・・・・牧野が喜ぶんじゃない？縁起がいいって。」<br />
<br />
「類、それは一昔前の一万円札だろ？今はな、諭吉さんだろ。」<br />
<br />
―――　そりゃないだろ、聖徳太子の親父かよ？<br />
<br />
「うんうんうん・・・類くん、いいとこ付くね。ついでに、付け髭してみてよ？」<br />
<br />
「アホか、コスプレじゃないっつうの。」<br />
<br />
「総二郎がその格好ということは、牧野もそういうやつ、着るんだろ？<br />
いきなりガチガチに格式ばって、窮屈なんじゃねえのか？」<br />
<br />
牧野に関して、いまだに過保護な思いやりを見せる元カレの司に、とりあえず笑みをくっつけ、受け答える。<br />
<br />
「まあ、確かに古い婚礼儀式は西門に伝わるやり方ではあるけども、最後はつくしが決めたから。<br />
親父のいう事聞かず、普通の教会式でも、好きなようにしていいって言ったんだぜ。<br />
跡継ぐわけでもねえし。」<br />
<br />
「フンッ・・・まあ、そう言うだろうな、あいつなら。」</p>
<p>そこへ、案内の召集が来たので、ノロノロ廊下に進み出て待機してると、ふいに曲がり角から現れたつくし。<br />
その姿に一同、いっせいに息を飲む。<br />
<br />
午前の緩い日差しを受けながら、いわゆる十二単衣を身に纏い、シャナリシャナリと介添えされつつ歩いてくる。<br />
<br />
神社の社殿をバックに廻廊を亀のようにゆっくり歩く様子は、遥か悠久の姫君の再来か、楚々とした風情から、美しい藤壺中宮（＝光源氏が憧れ続けた想い人）もこんな風だったのか？と思わせる気品さえ香り立つ。<br />
<br />
衣装マジックなのだろうが、文句のつけよう無いほど様になっていて、もともと華奢で色白なつくしはいいモデルだった。<br />
<br />
<br />
「おお～、あれだ・・・雛人形みたいだな。」<br />
<br />
「司、それを言うなら、女雛でしょ。」<br />
<br />
「おう・・・どっちでも同じだろ。」<br />
<br />
「つくし、綺麗～。」<br />
<br />
「ホント、お人形さんみたい～。」<br />
<br />
親族達からも溜息がもれる。<br />
<br />
ようやく１メートル先まで近づいた所で、介添人から止まるように声をかけられ、つくしはようやくホッとしたように顔を上げた。<br />
<br />
視線が交差するやいなや、柳・練・桃・萌葱・・・・美しい十二色の袷に包まれたつくしに目を見張る。<br />
<br />
淡い陽光が当たり、絵本のかぐや姫のように、自ら光を放ち輝いている。<br />
俺は胸に小鞠をぶつけられた様な衝撃を受けながら、どうにか声を絞り出した。<br />
<br />
<br />
「・・・！・・・つくし・・驚いた。綺麗だ。」<br />
<br />
「///・・・ありがと。」<br />
<br />
<br />
あわせ部分が開いて、縦に目立っていたのは浅葱色の若々しい青（＝緑）の布。<br />
一番上の羽織は、炎のような紅蓮（ぐれん）の着物で鳳凰の柄。<br />
漆黒に光る黒髪は鬘（かつら）だろうが、実につくしに似合っており、その艶かしい映り栄えに、冷や水をぶっ掛けられたように心臓がドキリと音と立てた。<br />
<br />
俺を見つめる眼（まなこ）は、白目部分が空に浮かぶ水晶のごとく、青白く透けるように清らかで、大きく見開かれた瞳は、まさに蒼黒（そうこく）色を帯びたガラス玉のよう・・・。<br />
<br />
美しい物を眺め鑑賞したいと思うのは、本能であり無意識の衝動で、時間が止まったかのように立ちすくみ、我を忘れ見入っていた。<br />
<br />
<br />
清浄な気配を破るのは、女達の嬌声で、俺を押しのける勢いでつくしに近づき声をかけるＴ３達、プラス、つくしの母親。<br />
浮き足立ち、カメラを手にする気持ちもわかるが、厳粛な儀式直前だぞと我に返る。<br />
<br />
すると、介添え人が慣れた風にお辞儀しながら、先をせかすように声をかけてきた。<br />
<br />
「新婦様がお疲れになりませんよう、進めさせていただきます。」</p>
<p>式次第の通り、進められる婚礼の儀。<br />
雅楽の調べが厳かに始まると、斎主によって身を清められ、朗々と読み上げられる俺達のバックボーンに先祖との繋がりを想い、結びの縁に感じるものがあった。<br />
<br />
誓詞、いわゆる、誓いの言葉を読み上げた後、御神酒を交わすが、つくしは三度とも最小限の動きで、ゆっくりと口に運んだ。<br />
箸より重いものを持ったこと無い深窓のご令嬢のようにも見える。<br />
衣装が重いのだろう。<br />
２０kgもの不慣れな衣装を着るのは重労働、指輪の交換も手助けをしてはめてやった。<br />
<br />
<br />
顔を一度上げたきり、後はずっと俯き気味のつくし。<br />
鬘が重いのか？まさか、もうバテ気味なのか？・・・最後までもつか？<br />
心配で顔を覗きこむと、あいつの瞳は潤んでいて、頬は薄ピンク色に上気している、その上、おっとりした仕草はこれまた可愛くて・・・喉が鳴る。<br />
おいしそうなのをぶら下げられると、いつものように顎を持ち上げ、その瞳を思い切り独占したい衝動に駆られるだろ。<br />
だが、それをグッとこらえ身を切られるように手を離した。<br />
これから、たっぷり時間があるわけだし、急ぐこともない。<br />
<br />
能舞の祝言が披露され、緊張が解け、祝いムードにかわる頃、無事に儀式が終了した。</p>
<p>それから、写真撮影のために移動した先は、廊下が広く庭園にせり出した板敷き１０畳くらいの縁で、まずは夕焼け色に美しく染まる紅葉が目に飛び込む。<br />
花を落とした椿、その下には灯篭と大きな庭石が二つ並んで、そこから先は、精霊が住んでいそうな鎮守の森が始まっており、薄暗くぼやけた静寂の音が聞こえてきそうだ。<br />
<br />
その景色をバックに、俺達二人は見つめあったり、手を取り合ったり、いくつかのポーズをさっさとこなしていく。<br />
手際の良いスタッフのお陰で、スピーディに進められる撮影。<br />
<br />
すると、何か特別なツアーだろうか、作務衣を着た神社関係者に説明を受けながら庭園を横切ろうとする外国人グループが現れた。<br />
<br />
「Oh, my god, how beautiful　・・・・ is that an wedding or something like that ? 」<br />
<br />
はしゃぐ声が聞こえる。<br />
その中でカメラを向けようとした男性が作務衣服のスタッフに片手で制されたため、ひどく大仰に残念そうに唸る声も続いた。<br />
すると、横にいた婦人が私たちに大声で直談判か。<br />
<br />
「Excuse us, could you please give us permission to take pictures of two of you?」<br />
<br />
５本指で俺達を差しながら、下手くそなお辞儀をしている。<br />
<br />
つくしを見遣ると、微笑み、同意していたので、快く撮らせてやることにした。<br />
<br />
「・・・quickly.」<br />
<br />
すると、婦人は歩み寄り、まるで女王陛下に謁見するように、恭しく頭を下げ、膝を一度屈伸させる仕草を見せる。<br />
まあ、俺らの格好は昔で言うなら、貴族の装いなので間違ってはいないが・・・。<br />
つくしは、何か言おうと口を開きかけるが、すぐに口を閉じた。<br />
<br />
<br />
「ふん?　何か言うつもりだった？」<br />
<br />
「いいの。今日だけ、役に徹するから。」<br />
<br />
「・・・そうだな、そうやって構えとけ。どうみても、今日のお前は麗しの姫君だから。」<br />
<br />
「西門さんこそ・・・似合い過ぎだよ。<br />
こっちが緊張してくるってば。」<br />
<br />
「えっ？だから、俯きっぱなしだったわけ？」<br />
<br />
また、頬を紅潮させ俯くつくし。<br />
このまま抱き寄せ接吻するのも、サービスという事で許されるのでは？とよぎる。<br />
<br />
<br />
<br />
「なっ？やっぱし、惚れ直しただろ？」<br />
<br />
「・・・っもう・・///。」<br />
<br />
「う～ん、結婚式っていいもんだな、なあっ？この後も楽しもうぜ。」<br />
<br />
「えっ？この後、何かあったっけ？」<br />
<br />
「上手い茶を点ててやるから。<br />
久々だろ？・・・俺が点てるとこ見るの。」<br />
<br />
「嘘っ！？西門さんが？」</p>
<p>ずっと、跡目を継ぐ事を当たり前に受け止めていた昔の俺。<br />
だのに、人生に航路なし、大きな挫折を思い知る。<br />
<br />
真っ逆さまに真っ暗な穴へ落とされ、もうどうしようもない苦悩のどん底でもがいた。<br />
狂ってしまった人生をどうやって再建していいのか途方にくれるばかり。<br />
長く、一人で闇の住人に成り下がり、腐りきっていた。<br />
そこへ、牧野つくしがやってきて、時間を重ねるごとに気力が湧き出るのが不思議だった。<br />
<br />
いつの日か、目の前の幸せが物凄く大きいことに気付いてから、急速に浮上したように思う。<br />
<br />
今日は心配かけたメンツが勢揃いする。<br />
けじめをつけるのに格好の日なわけで、お礼やら感謝やら今後の決意を込めて、茶を振舞おうと決めた。<br />
<br />
そのため、あらかじめ、周に準備を頼み、庭園に即席の野点会場を用意させた。<br />
客の椅子はパイプ椅子だ。<br />
つくしだけは、社殿の広間の縁側寄りに座らせ、扉を全開させて、まさに高みの見物をしてもらう。<br />
<br />
挨拶をした後、早速、茶を点て始める。<br />
<br />
<br />
一服目は、これまでつくしを育ててくれた牧野家の義父に感謝を込めて。<br />
二服目は、我が父への感謝、謝罪も込めて。<br />
<br />
続いて、集まっていた全てに心をこめて茶を点てた。<br />
<br />
深いお辞儀を何度も繰り返す義父。<br />
ひいき目に見ても、満足そうな家元。<br />
涙を流していた義母。<br />
茶腕を離さなかった母。<br />
<br />
他のメンバーも、俺の気持ちを受け止めてくれたと思う。<br />
それぞれのリアクションは生涯忘れられないだろう。<br />
<br />
<br />
最後に社殿を見上げ、つくしに口パクで「　の・む？　」と聞くと、目を見開き、嬉しそうに頷き返される。<br />
<br />
最後の茶碗にはたくさんの気持ちを込めたつもりだ。<br />
でも一番大きいのは、「こんな俺をこれからヨロシク。」というお願いかもしれない。<br />
<br />
点てた茶碗は俺が自分で運ぶ。<br />
５段の階段を上がり、不細工ながらも正座して、つくしの前に置いた。<br />
<br />
「どうぞ。」<br />
<br />
「頂戴いたします。」<br />
<br />
最後の一滴まですすり上げたつくしは、茶碗を返しながら、満面の笑顔で言う。<br />
<br />
「結構なお点前でした！」</p>
<p>色々あったけど、やっぱり、こいつが側にいてくれれば何もいらない。<br />
いつもそうやって笑っていて欲しい。<br />
真新しいお揃いのリングが光り、守るモノの重みに責任を感じるが、それがこんなに嬉しいことならいくらでも来い。<br />
俺達の第二の人生が始まる。<br />
<br />
どこからかモズの高鳴きが聞こえ、一段と空気が澄み渡った気がした。<br />
<br />
返された茶腕を手に、再び不細工に立ち上がり、階段を下りる。<br />
とにかく、一歩・一歩、歩いていこう。<br />
<br />
この焦茶に磨き上げられた階段に誓って。<br />
<br />
つづく</p>]]> 
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    <author>
            <name>boa</name>
        </author>
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    <published>2018-05-18T17:01:17+09:00</published> 
    <updated>2018-05-18T17:01:17+09:00</updated> 
    <category term="信じてる" label="信じてる" />
    <title>信じてる　７６＊</title>
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      <![CDATA[本文を読むには<a href="https://shinnjiteru.side-story.net/shinnjiteru/shinnjiteru76">こちら</a>からパスワードを入力してください。]]> 
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    <author>
            <name>boa</name>
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    <id>shinnjiteru.side-story.net://entry/75</id>
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    <published>2018-05-18T17:00:00+09:00</published> 
    <updated>2018-05-18T17:00:00+09:00</updated> 
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    <title>信じてる　７５</title>
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      <![CDATA[<meta http-equiv="Content-Style-Type" content="text/css" />
<title>shinnjiteru75</title>
<link href="simple2.css" rel="stylesheet" type="text/css" />
<p>75.<br />
<br />
『天高く馬肥ゆる秋』かぁ・・・・・・確かに・・・そういう感じ。<br />
<br />
見上げれば、澄み切った青空、塵も少なそうで透明度は・・・すっごく高い。<br />
それに、ここ最近、食欲は増して食後のデザート量も増えてるし。<br />
わたし、馬と一緒じゃん？<br />
スカッと爽やかな秋晴れだというのに、ふーっ、なんかヤダ。<br />
また一つ溜息、なんで消えてくれない？この悶々とした気持ち。<br />
<br />
<br />
<br />
結婚式まで一ヶ月をきったある日、帰宅したばかりの西門さんから漂ってきたマンゴと蜂蜜を足したみたいな女の子の香り・・・それも、きつい。<br />
いくら鈍感な私でもそれに気付かないなら、完全に病気だ。<br />
夕食時、ムスッとしている私の様子に気付いた西門さんに、その理由を吐かされた。<br />
<br />
<br />
「ああ・・・それで、妬いてくれてるってわけ？」<br />
<br />
「妬いてるってほどじゃないわよ。<br />
ただ・・・何で？女の子の匂いが強烈に？って思っただけ。」<br />
<br />
「妬いてんだろ？素直じゃねえなぁ～ったく。」<br />
<br />
「・・・・。」<br />
<br />
ビールグラスをテーブルに置いた西門さんは、飄々とした様子で料理に箸を伸ばす。<br />
素直に言えない自分が可愛くないって、よ～く分かっております。<br />
でもさ、勝手に思ってれば？みたいな西門さんもどうよ。<br />
私の事は全部わかってるから大丈夫って、豪語してたのは誰？わかってんなら何とか納得させてみなさいよ！<br />
一人勝手に苛立って、ジーッと睨みつけていた。<br />
<br />
「ん？」<br />
<br />
「で？」<br />
<br />
「は？」<br />
<br />
「なんで？」<br />
<br />
「何？匂いのこと、聞きたいわけ？<br />
それはなあ・・・たまたま、そいつが付け過ぎたんだろ。」<br />
<br />
「普通、そこまで移らないと思うけど。」<br />
<br />
「俺は潔白だぜ。」<br />
<br />
「誰？」<br />
<br />
「は？」<br />
<br />
「そいつって、どいつ？」<br />
<br />
初めて顔を上げて、マジマジ私を見つめた西門さんはフッと表情を緩めると、その女子学生について話し始めた。</p>
<p>「切羽詰ったように抱きついてきて口を開けば、&ldquo;好きです。私を先生の愛人にして下さい！オモチャにでも、何でもいいから抱いて！&rdquo;だぜ。<br />
抱きついて離さねえ勢いで、俺だって面食らったってば。<br />
香水をいろんな所に振り掛けて来たんだろうけど、やり過ぎだっつうの。<br />
生徒から、&ldquo;オモチャにでも&ldquo;って言われても、そんな気ないしお断り！<br />
もちろん、即答。」<br />
<br />
「オ・オモチャ・・・？？？？」<br />
<br />
「ふん？」<br />
<br />
言うべき事を言い終えたとスッキリ顔で、酢の物の小鉢を覗き込んだ西門さん。<br />
こっちは、あいた口が塞がらない状態だった。<br />
<br />
オモチャ・・・って、そこまで西門さんが好きってこと？<br />
捨て身で、体当たりでやって来る女学生っているもんだ、神風特攻隊バリの？<br />
恋人がいようと、嫁がいようと、関係なしって凄い思い切りというか信じらんない。<br />
若気の至り、恋は盲目、無我夢中・・・そんな風にガムシャラに突き進んで来られたら、西門さんだって正常な男、気の迷いとか出てくるかもしれないんじゃないの？<br />
<br />
再会してからこの４ヶ月、私達は時間も距離も乗り越えて、空白を埋めるように手を取り合い、愛し、愛されたい欲求、相互愛を深めていると思う。<br />
世界が一段と輝きを増し、綺麗に見える、共に過ごす時間が愛しくて、毎日が楽しくて。<br />
怖いほどに幸せだから、そんな幸せばかりじゃおかしいって、どこかに落とし穴があるんじゃないかって力んでいた気もするけれど。<br />
<br />
はあ～、これって幸せボケが過ぎた代償なのかな？・・・なんだか、こんな小さな事件に傷ついてしまう弱い自分にも呆れるし、はあ～、なんかヤダ・ヤダ。<br />
もう、西門さんみたいにやり過ごせない。<br />
<br />
<br />
私って、やっぱり100%の幸せに浸れない運命なのかって落ち込みもする。<br />
一生、ずっと苦労するように生まれてしまったとか。<br />
西門さんと付き合い始めて、毎日ドキドキの連続だったけど、こんな嫌なドキリって心臓と関係ないところで鳴るもんだね。<br />
<br />
陰湿な女のいじめに屈っしない雑草女、そんな所がＦ４には強烈で関心を買った、西門さんだって、そんな私が目新しく映ってたんでしょう？<br />
なのに、今の私って女々しくて弱々しい。<br />
<br />
幸せすぎて、立ち向かう力を無くしたなんて、この先どうすりゃいいんだか。<br />
雑草が萎れたら、見れたものじゃなくなるのは知っている。<br />
<br />
ふいに落とされた小石は、３０過ぎて春に目覚めた奥手の胸に波紋を起こし、いつまでも消えてくれなかった。</p>
<p>そんな折、突然、京都に遊びに行くから宜しく！と電話を寄越してきた滋さんと桜子。<br />
<br />
実際、本当にやって来た二人。<br />
それはいいけれど、有無を言わせず、昨夜は飲み会に突入で、久しぶりに女三人で酒盛りだった。<br />
その夜、西門さんが戻ってきたのは遅く、私たちが寝入る頃だ。<br />
<br />
<br />
「つくし、それって、マリッジブルーじゃないの？<br />
幸せだけど、漠然と憂鬱って、まさしく症状だよ。<br />
大好きな人と結婚できるのに、贅沢病！あ～あ、何があったか知らないけど、あわてて損したよ、ねえ、桜子！」<br />
<br />
「そうですよ、ガラリと生活環境が変わって、少し疲れもあったんじゃあないですか？<br />
女心は複雑ですからね。」<br />
<br />
「は？あわてた？」<br />
<br />
「ああ・・・いやいや、その～つくしの声が元気ないな～っと思ったから～。」<br />
<br />
「まあまあ、先輩・・・花の独身生活にバイバイってことで、乾杯！」<br />
<br />
「花の独身生活ねえ。<br />
そうよね、西門さんが浮気したら、私も独身気分に戻ればいいんだ。<br />
いちいち心配してたら、キリないし、身体がもたないし、目には目を！」<br />
<br />
「浮気で返す？言うねぇ・・・つくし。<br />
それだけ、元気ありゃあ、大丈夫だわ。」<br />
<br />
「先輩に出来ます？浮気なんて。」<br />
<br />
「う～ん、無理だったら、桜子！ホストクラブに連れて行ってよ。<br />
西門さんが女の子に囲まれて、だから、私はその逆でいく！」<br />
<br />
酔っぱらって、気が大きくなっていたようだ。<br />
<br />
「ねえねえ・・・だったら、フィアンセの存在をアピールすればいいんじゃない？<br />
ニッシーの授業に出席してみない？」<br />
<br />
「えええーっ？！」</p>
<p>それが昨夜の話。<br />
滋さんと桜子と三人、女子大の門をくぐりぬけ、西門さんの講義が行われる部屋へと向かう道々、なんだか話しの流れでこうなったけど、のこのこやって来たのを後悔し始めていた。<br />
<br />
私達って浮いてるんじゃない？<br />
正体がばれて、嫉妬深い浅はかな奥さんだと噂が広まって、西門さんの名誉に傷でも付けたらどうする？ってハラハラ・ドキドキだ。<br />
それでも、半分残っている好奇心が足を進ませる。<br />
<br />
そこは２００人くらい入れそうな階段教室で、前から５列ほどはギッシリと女学生が埋め尽くしていた。<br />
<br />
前の扉が開き、西門さんが姿を現すと、学生達から歓声こそ上がらぬものの、息を詰める声が和音となって波のように前方からあがってきた。<br />
<br />
スカイブルーのＹシャツに黒皮ライダース・ジャケット、そして濃紺の細身スラックス姿。<br />
朝のいでたちと変わらない西門さんだけど、ここから見ると遠く感じる。<br />
<br />
挨拶もそこそこに、部屋の明かりが少し落とされ、大きなプロジェクタに家屋や店舗の様子が浮かびあがる。<br />
今日のテーマは『京風について』のようで、間口が狭く、奥行きのある、いわゆる「うなぎの寝床」的な建物が次々と映し出され、その構造を他地域と比較するためにレーザーポインタを使って、部所の説明やら構造背景を淡々と説明していく西門さん。<br />
<br />
その声はマイクを通して聞こえてくる。<br />
口調は滑らかで淀みなく、意外なほど真面目にやっていた。<br />
そこには、必殺スマイルやリップサービスは一切なくて、文字通り、教鞭を振るっていた。<br />
<br />
本来備わった秀麗な容姿は、無表情故、それはそれで返って際立ってくるもので、レーザーポインタが魅惑的な魔法の杖に見えてくるからしょうがない。<br />
そりゃあ、釘付けになる女学生が前列を占領するのも頷ける。<br />
<br />
ポーッと見ているうちに、内容はさらに深く掘り下げられて、かつて日本の都、朝廷が置かれた京都に根付く精神性・・・プライドがどうのこうのと話が進んでいる。<br />
<br />
滋さんが声のトーンを落として話しかけてきた。<br />
<br />
「ねえ、つくし、ニッシー、ちゃんと先生してるじゃん。惚れ直した？」<br />
<br />
「もう～からかわない！<br />
滋さん、最後まで大人しく、絶対に目立たないようにしていてくださいよ。」<br />
<br />
「ちょっとくらい、ウインクくらいいいじゃない？」<br />
<br />
「ダメ・ダメ！！約束したでしょう？」<br />
<br />
滋さんは怒られた子供みたいに肩をすぼめる仕草を見せる。<br />
<br />
なんとなく想像はついていたけど、西門さんはどうやっても、やっぱり目立って格好いいわけで、女の子がうっとりするのは想定内だし、いちいち浮気を心配する自分の方に問題があるのは明らか。<br />
それは分かっているくせ、ノリでココへ来てしまい、見せ付けられた感じがする。<br />
良かったのは、全てを飲み込まないといけないって、視覚的に感じられたことかな。<br />
<br />
西門さんは私たち三人に気付いているのかどうかわからない。<br />
そのくらい、真剣に講義を進めて、熱く語っている。<br />
好きな仕事、西門さんの選んだ仕事を理解し、応援してこそ良い嫁なのに・・・私は、既に反省すら感じていた。<br />
<br />
やがて、講義の時間が終了し、室内が明るくなった。<br />
ﾚﾎﾟｰﾄを提出する指示を受けた生徒達は、ここぞとばかり西門さん目掛けて集まって、まるでセール初日のような熱気だ。<br />
<br />
<br />
「桜子、滋さん・・・行こ。」<br />
<br />
「えっ？いいんですか？」<br />
<br />
「うん。家でも会えるし。」<br />
<br />
そーっと席を立ち、横にずれて出ようとした。</p>
<p>キーン・・・<br />
<br />
「つくし！」<br />
<br />
マイクを通して私の名を呼ぶ男の声が響く。<br />
<br />
「つくし、ちょっと待て！」<br />
<br />
そういえば、聞きなれた声。<br />
<br />
振り向くと、女の子に囲まれた西門さんとﾊﾞﾁﾘと目が合い、片手を上げてニコリと、それはそれは爽やかな笑みを送ってきた。<br />
<br />
すると、まるで赤い絵の具が水中に広がるように、面白いように女の子の固まりに戸惑いと異様なヤキモチが広がって、私は思わず目を反らした。<br />
反らした訳はビビッたからじゃなくて、面食らい恥ずかしかったからだ。<br />
つくし！って、堂々と、初めて名前を呼ばれて、本当はとっても嬉しかったからだ。<br />
<br />
<br />
<br />
トントントンと階段を一段飛ばしで駆け上がってきた西門さんは、当たり前のように私の肩に手を載せた。<br />
<br />
「昼飯、食ったか？」<br />
<br />
同時に首を横に振る女三人。<br />
<br />
「じゃあ、一緒に行こうぜ。」<br />
<br />
大きく頷く私達は首振り人形と化していた。<br />
<br />
その大きな手は、私の腰に回され、肩が触れ合っている。<br />
ホッと安心する形と重さ、難しいパズルが瞬時に完成したようにスッキリした感じで、そのまま離れないで欲しいと強く思った。<br />
<br />
ごめんね、西門さん。<br />
私一人でイライラしてたのバカみたい。</p>
<p>教室を抜けると、長い廊下にはたくさんの学生達が行き交って、今こそ青春の時ぞと謳歌している風に見える。<br />
中には私たちに注目する女の子もいたけれど、それならそれでも気にならない。<br />
<br />
校舎の外に出ると、どことなく陽気が漂い、小枝にくっつく３枚の黄色い葉っぱに明るい陽があたっていて、『枯れ木も山の賑わい』・・・いやいや、これが本当に綺麗に見えてくるから不思議。<br />
<br />
<br />
<br />
「ねえ、何をご馳走してくれるの？」<br />
<br />
「私はね、お寿司がいい！」<br />
<br />
「京都の上賀茂ですよ、湯豆腐ですって。」<br />
<br />
「牧野は？」<br />
<br />
「え？・・・京野菜のお店なんかいいんじゃないの？」<br />
<br />
「ＯＫ、了解！決まり。」<br />
<br />
「ニッシー、ひど！お客様のリクエストを無視してる。」<br />
<br />
「お前ら、客じゃねえだろうが？」<br />
<br />
「あれ～？西門さん、私達の前でも、&ldquo;つくし&rdquo;って呼んでもいいんですよ～。」<br />
<br />
「は？うっさいな！」<br />
<br />
横を歩く西門さんは、なんだか照れて可愛い。<br />
<br />
「先輩だって、いつもは&ldquo;総二郎&rdquo;って呼び捨てにしてるんですか？&ldquo;総くん&rdquo;？&ldquo;総ちゃん&rdquo;？それとも・・・何て？」<br />
<br />
<br />
ギョッギョッ・・・。<br />
真っ赤になったところを口達者な二人にからかわれ、自然と小走りになる私達。<br />
顔を見合わせ、手を握り、息を合わせて逃げるように駐車場へと急ぐ足元がとても軽く感じた。<br />
<br />
つづく</p>]]> 
    </content>
    <author>
            <name>boa</name>
        </author>
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    <id>shinnjiteru.side-story.net://entry/74</id>
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    <published>2018-05-18T16:59:10+09:00</published> 
    <updated>2018-05-18T16:59:10+09:00</updated> 
    <category term="信じてる" label="信じてる" />
    <title>信じてる　７４</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[<meta http-equiv="Content-Style-Type" content="text/css" />
<title>shinnjiteru74</title>
<link href="simple2.css" rel="stylesheet" type="text/css" />
<p>74.<br />
<br />
日差しが夏色を帯び始めた頃、仕事にメドが付き、まあまあな幕引きを描けたのを区切りに、生活の拠点を京都に移すことにした。<br />
<br />
長く一人で暮らしたアパートがすっからかんになるとしんみりもする、けれども、待ち人を思うとたちまち嬉しくなり、作業する手も軽やかにやる気が湧いた。<br />
<br />
そして、京都でスタートさせた同棲生活。<br />
それは転がり込むというよりも、二人で仲良く巣作りを始めたという風で、失業保険をもらいながら、残りの独身生活をノンビリ過ごすつもりだったのに、そうは転んでくれないのが私の人生？<br />
<br />
結婚となると口を出す大人も増えるわけで、想定外の事も起こるのね。<br />
<br />
待っていたのは、新居に入れる電化製品や家具選び、それに加え、マンション内装がセミオーダー式の為、浴槽やらドアノブやらキッチンユニットまで、好みを伝えて決める作業だった。<br />
<br />
西門さんが住む外国人用２ＬＤＫへ引越し、片付けるのと同時進行で、日中はお店やショウルームを歩き回り、カタログと実物を見比べ、帰宅後、ゆっくり検討する。<br />
だから、部屋の中にはそんなブツが山積みだ。<br />
せっかくだから、人任せにしたくなかった。<br />
<br />
そう・・・新居、出来たばかりのマンション角部屋、５ＬＤＫ、大きなベランダ付き。<br />
結婚式後、そちらで生活を始める予定になっている。<br />
二人へのプレゼントとしてそれをポンと差し出したのは、家元・・・西門さんのお父様。<br />
<br />
「総二郎の男臭い部屋ではあまりに可哀想すぎる。」と鶴の一声だったらしい。<br />
<br />
そんなお気遣いには感謝していますが、それって無駄遣いじゃありません？って何度口から出そうになった事か。</p>
<p>そんなこんなでバタバタと同棲がスタートしたある夏の暁、西門さんが運転する車で京都府丹後半島の美しいビーチへ繰り出すこととなる。<br />
実はそこで、優紀の家族と合流する計画で、独身時代と違う形でゆっくり過ごせるのも楽しみだ。<br />
<br />
のんびりした時間を過ごすのは、実に久しぶり。<br />
それに、同棲して初めてとなるデートに二人とも結構な気合がはいってる。<br />
<br />
テーブルに置かれた観光ガイド『夏だ！お奨めビーチスポット　関西編』は、「近所の本屋さんで買ってきた。」と西門さんはソファーに座り込み、しばらく目を通していたみたい。<br />
何気にマニュアル男だったの？<br />
西門さんの行動パターンを一つづつ、日捲りカレンダーのように分かっていくのが、新鮮・新鮮。<br />
<br />
<br />
シーズンが終わると大部分の洋服を処分し、次のシーズンにほとんど新調するのがパターンだと知った時にはあきれ果て、新聞のニュース面を豪快に開いては、途上国関連記事を手当たり次第バンバンッ！叩きながら厳重注意したものだ。<br />
資源の無駄遣い！もったいない！って。<br />
<br />
<br />
見直す所もある。<br />
趣味のいい西門さんだから、物にこだわって、うるさいのかと思っていたら、実は鷹揚で寛大。<br />
家事は全部、自分の身の回りのことさえも、私の好きなようにさせてくれた。<br />
それがものすごく嬉しかったりする。<br />
<br />
<br />
「西門さんの水着、見つけたよぉ！！<br />
寝室に出しておいたから、後で見ておいてね。」<br />
<br />
「おう、サンキュー。」<br />
<br />
昨夜は台所でそんな会話しながら、西門さんとお揃いの夫婦茶腕を乾いた布巾で拭いて棚にしまい、長いお箸と少し短いお箸も同じ布巾の中で絡ませ合い、カラカラ音を立て乾かした。<br />
二人分の食器だから、食洗機は使わずに、おままごとみたいに一品ごと丁寧に扱って好きなようにしまう、そうしてだんだん自分のカラーに染めているのかもしれない。<br />
<br />
<br />
<br />
今朝は早起きするつもりだったのに、あろう事かすっかり寝坊してしまった。<br />
子供のいる優紀達と比べ、まだ身軽な私達は軽装のはずなのに、朝からバッタバタで、もう既に汗だく。<br />
理由は、勿論、この同居人のせい。<br />
昨夜、タフな男は惜しみなく愛の言葉を囁きながら、その手で私を転がすように翻弄し、なかなか寝かせてくれなかったからだ。</p>
<p>「なんだ？その大荷物。」<br />
<br />
「え？お弁当とお菓子とお茶と・・・それから、トランプとか帽子とか・・・大事な日焼け止めでしょ。」<br />
<br />
「これも、持って行くつもり？」<br />
<br />
その長い指で転がっている物を指差す西門さんの頭上には、？マークが浮かんでる。<br />
<br />
「うん！ナイロンのシートより気持ちいいし。<br />
イグサの茣蓙（ござ）・・・知らないのぉ？」<br />
<br />
「えっ？ビーチにゴザ？知らないと言っちゃ、知らないな。」<br />
<br />
「っふふ、じゃあ、丁度いいじゃん、西門さんの初体験なんて貴重だよ。<br />
これさ、中学の時から使ってるんだけど、まだどこも傷んでないんだよね。」<br />
<br />
「中坊の時から？マジ～～？ビックリのエコライフだな。」<br />
<br />
「だって、傷んでないから捨てるのもったいないじゃん？」<br />
<br />
「・・・わかった、わかった、リョーカイ、積めばいいんだろ？！」<br />
<br />
<br />
<br />
西門さんは、私が洗濯し、畳んでおいたポロシャツを着ていた。<br />
濃紺ｘ白のストライプの、若者向けアメリカ・カジュアルブランドものをさらりと着こなし、腕にはホワイトゴールドのデイトナが光る、どんなカジュアルでも匂い立つような色男振りに遜色はない。<br />
<br />
荷物を車へ運ぶ何気ない姿が格好良くて、思わず見とれてた。<br />
ふうー、この先が思いやられる。<br />
彼氏であり未来の旦那様だと思うと、狐につままれた不思議な気分で、今さらだけどありえない！って思ったよ。<br />
<br />
現実は、彼とこれからデート！<br />
まだまだ二人の時間は新鮮でドキドキ。<br />
なんだか物凄くテンションが上がる！<br />
<br />
「一人でニヤケテル牧野、近所の人に見られてるぜ。」<br />
<br />
「///えっ、嘘？？？」<br />
<br />
「うっそ、すぐ信じるやつがバカを見る。」<br />
<br />
「もう～西門さん。<br />
今日は初デートだもん！嬉しいの！天気もいいし、最高じゃない。」<br />
<br />
西門さんは口角を少しあげ、ニヤリと微笑んだ。<br />
<br />
「これから時間があったら、色んな所、行こうなっ。」<br />
<br />
「うん。//」</p>
<p>西門さんが運転する赤いＢＭＷの四輪駆動はスイスイ高速を走りぬけ、灰色の道路を真っ直ぐ切り裂くように、差し込む光と競争しながら、ジェット・コースターのような音をたてゴーッと駆けていく。<br />
気分は高揚し、鉄腕アトムの歌でも飛び出しそうな心境だ。<br />
<br />
さながら、魔法の赤い絨毯に幸せなカップルを乗せ、青い空を軽々と飛ぶ。<br />
太陽は笑い、白い雲は綿菓子のように甘く誘い、七色のキャンディー・レイが手招きして、どうぞ中をくぐれと私たちを待っている。<br />
横にいる西門さんは、人間に化けてるけれども、本当は魔法使いで。<br />
だから、そんな仕業は御茶の子さいさいの簡単な出し物、どんな女の子もたちまち恋をしてしまう。<br />
とびきり器用で男前の魔法使いなんだ。<br />
<br />
<br />
<br />
「あッ、海が見えてきたよ！」<br />
<br />
「・・・そろそろだもんな。」<br />
<br />
四輪駆動は砂浜へそのまま乗り込んで、ギュルルルンと鳴いてエンジンを止めた。<br />
<br />
目の前には青い空と蒼い海、そして久しぶりに嗅ぐ・・・潮の香り。<br />
波打ち際に、よせては引く一定の波のリズムは子宮の記憶のように耳に響き、安らいでくる。<br />
砂浜は長くて広くて白い。<br />
その分、照り返しがきつく目が眩む程ゴージャスだ。<br />
今日は一日、サングラスをはずせそうもないと思った。<br />
<br />
東京じゃあ見れない綺麗な海岸・・・白砂青松を具現化した日本の風景だ。<br />
砂浜の白と対照的に群生する松の青々しさ、茶色い岩肌も絵に描いたよう。<br />
ふと、葛飾北斎の富嶽三十六景が浮かんで、原稿やら出版物が山積みのデスクが懐かしく思えた。</p>
<p>既にビーチにはたくさんの人がシートの上で思い思いに過ごしていた。<br />
早速、着替えて、優紀たちと合流する。<br />
優紀の娘：銘ちゃんはもうじき３歳、おしゃべりが上手で、足元で「ママも一緒に入ろう！」とグズッていて、再会を懐かしむと早々に、私達は優紀達の荷物番をかってでた。<br />
<br />
西門さんは優紀家族の１ｍ横に持参の茣蓙を広げ、レンタルパラソルを差し込むと横になる。<br />
私も、よっこらしょっと隣に座った。<br />
<br />
<br />
「西門さん、砂の音、聞こえなかった？キュッキュッって。」<br />
<br />
「ああ、鳴き砂っていうらしいぜ。」<br />
<br />
「例のガイドブック？」<br />
<br />
「おう、学んだ。」<br />
<br />
「クスッ。」<br />
<br />
私は日焼け止めのキャップを開けながら、無意識にニヤケていたと思う。<br />
<br />
「何？」<br />
<br />
「別に、何でもないよ。」<br />
<br />
遠くではしゃぐ親子三人を眺める。<br />
<br />
「牧野、何考えてる？」<br />
<br />
「何にも・・・。」<br />
<br />
「当ててやろうか？」<br />
<br />
「どうぞ。」<br />
<br />
「お弁当喰いてえ、だろ？」<br />
<br />
「ち・ちがうよ！そんなんじゃない！大ハズレ！」<br />
<br />
「ふ～ん、別にいいけど・・・牧野が楽しそうだし。」<br />
<br />
「うん・・・楽しい・・・本当にそう。」<br />
<br />
ポツリと・・・素のまま、素直に答える私は相当幸せボケだ。<br />
今日のこと、楽しみに考えてくれていた西門さんはこれからも、何か事あるごとにああやって調べてくれたりするんだろうか。<br />
優紀たちを見ながら、未来を投影する私、早合点もいい所なのに・・・でも、ワクワクする気持ちはどうにもこうにも止まらない。<br />
<br />
横たわる西門さんを振り返り、見下ろしながら笑顔でお願いした。<br />
<br />
「ねえ、背中に日焼け止めローション、塗ってくれる？」<br />
<br />
「おう。」<br />
<br />
<br />
起き上がり、ココナッツの香りいっぱいの白いローションを私の肩から背中へ塗りつけてくれる西門さんの手。<br />
私はもう、その手に掴まってピクリとも動けないし、逃げるつもりもない。<br />
<br />
ビキニトップの肩紐を持ち上げ、上から下へと優しく撫でる様に、そして、背中の布も持ち上げ、端から端まで余すところなく丁寧に塗る。<br />
大きな手は数回動かせば足りるだろうに、またローションを掌にたっぷり出したようだ。<br />
<br />
「この辺、真っ白。焼けたら腫れ上がるぜ。」<br />
<br />
脇から潰れた胸へと続くサイドライン、敏感で最も白く柔らかい部分を覗き込むように腰を曲げ、丁寧に塗ってくれている。<br />
<br />
「ずっと触っていてえ。<br />
牧野はどこもちっこくて、すっべすべ・・・これ、俺の特権だよな？」<br />
<br />
「まあね、他に頼む人もいないし。」<br />
<br />
「誰にも譲るつもりねえし。」<br />
<br />
「/////・・・。」<br />
<br />
幸せな気分のまま、目をつぶっていると、そんな時にも魅惑的な睡魔がやってくる。<br />
『西門さん、ゴメン、このまま少し眠る・・・。』心の中で謝る私って義理固い？<br />
<br />
鼻先を掠める生ぬるい風は潮の香りいっぱい心をすり抜け、窓をサッと開け放つような解放を誘うから。<br />
子供達の歓声や近くを横切る女の子の会話は、優しく包んでくれる真綿のように、それはそれは柔らかくて、こそばすように眠りを誘うから。<br />
どこか遠くの風景を眺めているようで、どんな風かちっとも描けない。<br />
緩んで溶けていく意識は至福だった。<br />
<br />
どのくらい時間が経ったのだろう？<br />
ふと、優紀の声がＢＧＭの音の中から、飛び出してきた。<br />
私はうつ伏せのまま、いくらか眠っていたのかな？<br />
<br />
<br />
「・・・本当に辛抱強いんですから、昔から・・・・ふふっ。<br />
あの・・スピーチ・・・で、泣いてしまって。<br />
つくし、本当に幸せそうで・・・。<br />
西門さん、つくしのこと、よろしくお願いしますね。」<br />
<br />
「優紀ちゃんも幸せそうに見えるよ。<br />
良い人と出会ったんだな。」<br />
<br />
「ええ、幸せですよ。<br />
西門さんにも感謝してますから。」<br />
<br />
<br />
優紀・・・。<br />
優紀にとって、西門さんはずっと覚めない夢をみせてくれるファンタジスタだった。<br />
夢を見せてくれる人。<br />
あの時はそんな風に思わなかったけど、今なら少し分かる気がする。<br />
私も西門さんといるとワクワクが止まらないもん・・・。<br />
<br />
「主人は穏やかでおもしろくて、それにとっても子煩悩なんですよ。<br />
ほら、銘と上手に遊んでるでしょう？<br />
もし急に彼が消えちゃったら、どうするだろ。<br />
つくしみたいに、長い間、待ってられるかな？」<br />
<br />
「優紀ちゃん・・・？」<br />
<br />
「ふふっ・・・冗談です。<br />
多分、髪振り乱して探しまくってる・・・もう母親ですから。<br />
彼はそんな事できる人じゃないですけど。」<br />
<br />
「へえ～、あの優紀ちゃんがね～。」<br />
<br />
「クスっ、つくしももっと強くなるかもですよ。」<br />
<br />
「こいつが？もう十分・・・ハハ。」<br />
<br />
<br />
「西門さん、つくしには大事な事はちゃんと言ってあげてくださいね。<br />
不安にさせないであげてくださいね。」<br />
<br />
「！・・・。」<br />
<br />
「老婆心で・・・きっと心配無用でしょうけど。<br />
じゃあ、私、旦那さんと交代してきますね。」<br />
<br />
ニコリと笑って立ち上がる優紀が見えるようだった。<br />
<br />
「あっ、優紀ちゃん・・・・・・、アドバイスをサンキュー。」<br />
<br />
<br />
優紀の老婆心・・・ホントに昔の話まで持ち出して、昔過ぎるってば！・・・でも、ありがとう、優紀。<br />
<br />
「お前、目、覚めてんだろ？」<br />
<br />
「えっ？ばれてた？」<br />
<br />
ふと、西門さんに手をつながれた。<br />
強く握られた手から伝わる西門さんの気持ちが、こそばくなるくらい響いてくる。<br />
『私達の幸せを守ろうと、何があっても守ろう』と固い決心が伝わってくるよ、西門さん。<br />
<br />
<br />
旦那さんが戻ってくると、入れ替わりに私たちも海へ入ることにする。<br />
<br />
キュッキュッキュッ・・・裸足が砂に食い込むたびに聞こえる音。<br />
西門さんの手に引っ張られ、ズンズン海の中へ入っていくけれど、遠浅の海はファミリー向けに丁度良く、私のお臍の高さで安心だと思った。<br />
<br />
優紀に両手を握られ、バタ足練習をしている銘ちゃんに近づいた。<br />
<br />
「凄い、銘ちゃん、まだ３歳になってないのに、バタ足できるんだ。」<br />
<br />
「うん、赤ちゃんの時からスイミングスクールに通わせていて、水が大好きな子なのよ。」<br />
<br />
「へえ～大したもんだ。」<br />
<br />
「銘、ここからあのお兄さんのところまでバタ足で行ける？」<br />
<br />
<br />
えええっ？泳げるの？優紀！こんな子供に、そりゃ無茶でしょ？？！<br />
すると、心配を他所に、銘ちゃんは返事もせずに５メートル離れて立つ西門さんに向かってバタバタと泳ぎ出した。<br />
自分がこんくらいの時は、砂浜で遊ぶのがせいぜいだったと思う。<br />
それを思うと、この小さなスイマーが驚異的に思えるし、西門さんもビックリしたようで、咄嗟に腕を広げ、心配そうに見守っている。<br />
<br />
１メートル・８０センチ・５０センチと近づいて、西門さんが根負けしたように銘ちゃんを掬い上げた。<br />
<br />
「すげえ～、銘ちゃん、良くできました！未来のオリンピック選手だ！ご褒美に、ホラ。」<br />
<br />
そう言って、高い高いをする西門さんは白い歯を見せ、楽しそうに笑っていた。<br />
銘ちゃんもキャッキャッと嬉しそうで、まるで若いパパとその娘のよう。<br />
コアラのように小脇に抱えたかと思うと、もう一回とねだられて、高い高いを何度か繰り返す。<br />
ふと周りを見ると、オバサンから若い女の子まで、無邪気にはしゃぐ嘘親子に視線が注がれている気がした。<br />
<br />
その腕にはデイトナを光らせ、濡れた黒髪はオールバックに、わずかに前へ落ちる髪の束からその超端正な顔に雫が落ちて光る、パパにしては格好良すぎ、確かに目立ってる。<br />
いや、浮いてるよ！！<br />
<br />
「銘、そろそろ、こっちに戻ってらっしゃい。」<br />
<br />
すると、また来た時と同じようにバタバタと、あっぱれな泳ぎっぷりだった。</p>
<p>「牧野、もっと深いところ行こうぜ。」<br />
<br />
「ヤダ！」<br />
<br />
「大丈夫だって。」<br />
<br />
抵抗むなしく、引っ張られて歩き出す。<br />
ズンズン行くと、足下の水温が急に下がり、水面が顎まできていた。<br />
<br />
「ストップ！ここでストップ！にしかど～！！」<br />
<br />
気付くと、つま先立ちでマジ焦った。<br />
あわてて、大木にしがみつくように、西門さんの身体につかまるのは条件反射。<br />
腕を背中に回し、両脚まで絡ませて、溺れる者、藁をも掴むの心境か。<br />
<br />
「ちょっと力抜け。ちゃんと、銘ちゃんみたいに抱っこしてやるから。」<br />
<br />
「ええっ？恥ずかしいでしょ。」<br />
<br />
「いいじゃん、そんくらい。もう誰もいねえし。」<br />
<br />
ニヤリと笑う西門さんの白い歯が、ジョーズのように光って見えるよ。<br />
<br />
「そうそう、それでいい。」<br />
<br />
私の腕を西門さんの首の後ろで交差させ、胸の間に少し距離を置き、お腹とお腹は密着させて、目の前には水に濡れた西門さんの顔が来る。<br />
<br />
「な？平気だろ？」<br />
<br />
「うん・・まあ、平気だけど・・・近すぎる。」<br />
<br />
西門さんは私の瞳を覗き込み、微かに微笑んだ。<br />
視線を私の瞳から下へとずらす、そして、唇に焦点を当てじっと眺めるように見つめている。<br />
<br />
その物欲しげな表情・・・そんなのを目の前にすると、胸がギューッと押される感じがして、何か言わなきゃって思った。<br />
すると、聞こえてきた辛そうに甘えた声。<br />
<br />
「牧野、キスしたい。」<br />
<br />
「・・・」<br />
<br />
思わず、ゴクリと唾を飲み込んで見つめ返す。<br />
西門さんは、私の返事を待たずにゆっくりとキスを落としてきた。<br />
<br />
ちょっびり塩辛いキス。<br />
二人の間で、チャプリと波が立つ。<br />
唇を割り進入してきたのは温かいいつもの西門さんの舌で、私の口腔内をなぞるように絡め始め、だんだん深いキスへと進んでいく。<br />
<br />
冷えた足元は、西門さんのキスでほんわか温かくなる。<br />
胸の中も温かくなって満たされる、憎らしいほど気持ちいいキスだった。<br />
西門さんに掴まって、このままずっと波間で漂っているのもいいと思う。<br />
<br />
子供達の歓声がBGMのように聞こえてくる。<br />
海水はブランケットのように私たち二人を優しく包んで、日常の世界を視界から消してくれた。<br />
<br />
つづく</p>]]> 
    </content>
    <author>
            <name>boa</name>
        </author>
  </entry>
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    <published>2018-05-18T16:58:11+09:00</published> 
    <updated>2018-05-18T16:58:11+09:00</updated> 
    <category term="信じてる" label="信じてる" />
    <title>信じてる　７３＊</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[本文を読むには<a href="https://shinnjiteru.side-story.net/shinnjiteru/shinnjiteru73">こちら</a>からパスワードを入力してください。]]> 
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    <author>
            <name>boa</name>
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    <id>shinnjiteru.side-story.net://entry/72</id>
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    <published>2018-05-18T16:56:54+09:00</published> 
    <updated>2018-05-18T16:56:54+09:00</updated> 
    <category term="信じてる" label="信じてる" />
    <title>信じてる　７２</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[<meta http-equiv="Content-Style-Type" content="text/css" />
<title>shinnjiteru72</title>
<link href="simple2.css" rel="stylesheet" type="text/css" />
<p>72.　　<span style="color: maroon;" color="maroon">＊後半部分、少しだけ性的表現があります。苦手な方は、スルーして下さい。</span><br />
<br />
<br />
隅田川にほど近い、大都会の中心にそびえるモダンでスタイリッシュなホテルだった。<br />
<br />
西門さんに手を引かれ、吹き抜けのロビーに入ると、西門さんは私を残しフロントへ直行し、チェックインを済ませた。<br />
そして、視線で私を呼び寄せ、肩に手を置き、エレベーターまでエスコートする。<br />
<br />
磨き上げられた黒い床も、ロビーに並ぶえらく大きく角張った白い革ソファーも、フロントを照らす間接照明も、この男の背景に憎らしいほど似合っていて、絵に描いたように溶け込んでいる。<br />
そんなスマートな男性（ヒト）に手を引かれるのは鼻が高く、自分がモデルにでもなったかのような勘違いを呼び起こしてしまう。<br />
<br />
私たちを乗せたエレベーターの箱は、ホテル独特の優しい二連音を響かせ、揺れることなく静かにラウンジ階で止まった。<br />
私の横にはピタリと西門さんが張り付いて、ボディ・タッチはいよいよ遠慮がなくなってきた。<br />
端から見ればお熱いご両人、今や、その手は堂々と腰に回され、さりげなく腰骨や臀部をさすり、以前の私なら絶対黙ってられなかったスキンシップを繰り返してくる。<br />
<br />
それがどうしたことか、ちっとも嫌に思わないで、雲の上を歩いているみたい。<br />
<br />
非日常的な場所と婚約を決めたばかりの特別な一日。<br />
そんな条件下、他人の視線は気にならず、むしろ、触れられる箇所から幸せな気持ちがジワーっと広がり嬉しく思えた。<br />
<br />
勝手な妄想にせよ、まるで世界中が自分達を祝福し、温かく見守っているかのように、何も遠慮する必要ない奇妙な錯覚に陥っていたのかもしれない。<br />
<br />
シンプルにとても幸せな気分だった。</p>
<p>さすがに24Fからの眺望は美しく、何といっても東京タワーが圧巻だった。<br />
すぐ目の前をオレンジ色に発光しながら、存在をアピールする巨大オブジェ。<br />
こんな素敵な夜景を見れば、ロマンチックな夜に誰でも乾杯したくなるだろう。<br />
<br />
西門さんはスマートに私の座る位置を指し示す。<br />
この歳になって、今さら過去に嫉妬するのは無粋だし、百戦錬磨のモテ男相手にそりゃキリ無い話ってもの。<br />
<br />
けれども、優しく扱われ、こんな風に女心をくすぐられると、絶好調に満たされている瞬間でさえ顔を出してくる生来の性質、自信の欠如・・・独り相撲とわかっていても、辿ってしまうこのバカな思考回路なのだ。<br />
<br />
<br />
もっと美人でスタイル抜群の女性の方が、この場所にも、そして西門さんにも、ずっとふさわしいんじゃないのかな？<br />
<br />
きっと西門さんは、それを聞くと怒る。<br />
西門さんに吐き出すことは、西門さんを不快にさせ、貶（おとし）めることを意味すると知らないほど、青っちい年齢でもない。<br />
<br />
でも、こればかりは改善ゼロ、自然に出てくるのだからどうしようもない。<br />
天下のＦ４相手だもの、無意識にそう巡ってしまうのは無理ない話かもしれない。<br />
<br />
一人勝手に素敵な女性と比較し落ち込んで、何やってんだろ。<br />
どうしようもないね、私の悪い癖。</p>
<p>「牧野、何飲む？」<br />
<br />
「ジンライムを。」<br />
<br />
「了解。」<br />
<br />
やがて、手元にやってきたお酒で乾杯し、一日を振り返った。<br />
両家の話から未来の話へと続き、約束を交わしたばかりの二人にぴったりの会話。<br />
<br />
<br />
「秋なんかすぐ来るだろうし、それまで恋人期間楽しもうぜ。」<br />
<br />
「うん・・・楽しもう。」<br />
<br />
「じゃあ、海でも行くか？」<br />
<br />
「海？どこの海？」<br />
<br />
「ハワイでもニュージーランドでも、どこでも。」<br />
<br />
「バカ・・・そんなの新婚旅行みたいじゃない。」<br />
<br />
右手におさまる指輪をいじりながら、返事を返す。<br />
見れば見るほど、素敵な指輪だと思い見つめていた。<br />
<br />
「気に入った？それ、やっぱ牧野に似合ってる。<br />
俺の目に狂いなし！サイズもドンピシャだったろ？」<br />
<br />
「ホントに西門さんはプレゼント上手なんだから・・・どんな物が似合うか、想像できるんでしょ？」<br />
<br />
「だから、牧野のことはわかるって言ったろうが。」<br />
<br />
「質問なんだけど、こういう・・・指輪、何回も買ったことあるわけ？」<br />
<br />
「おいおい、なんだよ、突然とがった質問かよ。<br />
お前、何かすっごい勘違いしてない？<br />
俺、指輪を選んだのも、プレゼントするのも、初めてなんですけど。」<br />
<br />
「うそだよっ、そんなの？！」<br />
<br />
「ホ・ン・ト。<br />
指輪は危ないだろ・・・勘違いされちゃあ、たまんないしな。」<br />
<br />
「私だけに？今までたくさんの女性（ヒト）と付き合ってきたじゃない。」<br />
<br />
「牧野、お前は全然わかってないんだな～ハア～。<br />
女に渡すプレゼントなんて、指輪以外にもいっぱいあるんだぜ。<br />
指輪は特別！特別なだ～いじな女に贈るもんだろ？<br />
そんなのその辺のガキだって知ってる。<br />
あきらだって、好きな女からねだられても、指輪は贈ったこと無いはずだぜ。<br />
いつか、聞いてみ。<br />
そんなヘマする奴は、女に振り回されてるバカな男だけ。」<br />
<br />
そう言って、背もたれに身体を預け、下から睨むように見つめてくる。<br />
<br />
「うわっ、西門さん、あいかわらず、強気な発言。<br />
でもさ・・・西門さんなんだもん・・・・・・。」<br />
<br />
迷子になったような幼子のような声でそう返す私。<br />
<br />
「俺だから？」<br />
<br />
「西門さんだから・・・何でも一通りやってそうなんだもん。」<br />
<br />
すると、西門さんは右手で拳を作り、心臓を二・三回立て続けに叩く仕草を見せた。<br />
ネクタイの上をドン・ドン叩く音が響いても、何ともなさそうな胸板らしい。<br />
<br />
「あんなぁ、言っとくけど、お前だけなの、ここにドーンっと入って来た奴は。<br />
俺のこと、スケコマシとか思ってんのは仕方ねえかもしれねえけど、その辺の分別はちゃんと有りますから。」<br />
<br />
その目は真剣で、少し怒ったような色で私を見つめていた。</p>
<p>「牧野、行こう。」<br />
<br />
「はあ？」<br />
<br />
「もう、じれったいから・・・行こうぜ。」<br />
<br />
そういって、席を立った西門さんは私の肘をつかんで引き上げた。<br />
<br />
「えっ？でも、まだ来たばっかりだよ。」<br />
<br />
「喉は潤っただろ？」<br />
<br />
頷き終わるのも待てない様子で、手を引かれ、すぐにその手は腰へと回された。</p>
<p>エレベーターに乗り込むと、箱は更に上へ上へと上昇した。<br />
<br />
<br />
部屋の重い扉が閉まるなり、野獣さながら襲い掛かってきた男。<br />
性急に落ちてきた口付けは今までにないほど激しくて、いっぺんに胸を焦がされ、火傷するくらいグラグラ熱く煮える欲情の釜へと真っ逆さまに落とされていくような気がした。<br />
<br />
<br />
「にし・・かどさん・・・。」<br />
<br />
「牧野、今からしっかり教えてやる。<br />
お前が不安に思うことなど、一切ないって。」<br />
<br />
私の両耳を覆うように大きな手で顔を挟まれ、我が身は壁にピタリとくっつきこれ以上後退する隙間なし、西門さんの怒気を含んだ覇気に押されまくり、もう受け止めるしかない状態だ。<br />
<br />
<br />
キスの激しさと比例して、もみくちゃになる髪の毛。<br />
大きな男の両掌は私の心を囲い込み、軟化させ変形させていく、そして、大きくこじ開けられた口腔内では、西門さんの舌が縦横無尽に動き回り責めたてる、変形されたまま何もかも全てが西門さんの肺の中へ吸い込まれていくようだった。<br />
<br />
そうなっては、ドア付近で響く拗音も恋人達を扇情する音にしか聞こえず、早くも西門さんの左手は胸の膨らみへと落ち、服の上から無遠慮に揉み始める。<br />
キスをしたまま、続いてもう片方の膨らみも同時に揉まれ、私は貼り付けられたように身動き一つ出来なかった。<br />
<br />
そして、西門さんは何を思ったのか、急に腕を背中に回し私を抱きしめ、大きな溜息ともとれる声をもらした。<br />
<br />
「・・・・はぁ。」<br />
<br />
顔は見えない。<br />
けれども、思いつめたように頑なに力いっぱい掻き抱いているといった感じで、私は今にも肋骨がポキポキポキっと音をたて、何本か折られてしまうのではないかと心配になった。<br />
<br />
<br />
「折れちゃうよ。」<br />
<br />
「ごめん・・・。」<br />
<br />
<br />
男の人って、まるきり違う種類の、切れるような腕力を持っている。<br />
西門さんらしくない加減で驚いたけど、少し力を入れただけで、瞬時にあんな風に抱きしめられた。<br />
<br />
腕を解き、力が抜けると、私の高さに合わせるため、前屈みになった西門さんは真顔で顔を寄せてくる。<br />
<br />
「俺・・・こんなにマジ惚れしたの初めてだから、この先どうなるか見当付かないけど。<br />
牧野のこの目・口・鼻・・・・この身体・・・声も中身も・・全部好き。<br />
今まで出会ったどんな女のよりずっといいと思ってる。<br />
だから、牧野は俺を信じてついてくればいい。」<br />
<br />
「西門さん・・・それは、言いすぎ・・・十人並みだもん。」<br />
<br />
「いいや、光って見えて仕方ねえな。」<br />
<br />
そういうと、ニヤリと笑い、私の手を取って部屋の奥へと促した。<br />
<br />
つづく</p>]]> 
    </content>
    <author>
            <name>boa</name>
        </author>
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    <id>shinnjiteru.side-story.net://entry/71</id>
    <link rel="alternate" type="text/html" href="https://shinnjiteru.side-story.net/shinnjiteru/shinnjiteru71" />
    <published>2018-05-18T16:55:24+09:00</published> 
    <updated>2018-05-18T16:55:24+09:00</updated> 
    <category term="信じてる" label="信じてる" />
    <title>信じてる　７１</title>
    <content mode="escaped" type="text/html" xml:lang="utf-8"> 
      <![CDATA[<meta http-equiv="Content-Style-Type" content="text/css" />
<title>shinnjiteru71</title>
<link href="simple2.css" rel="stylesheet" type="text/css" />
<p>71.<br />
<br />
結婚の意志を両家に伝えに行く日がやってきた。<br />
もうじき西門さんが迎えに来る予定時刻。<br />
<br />
うちのパパとママはいいとしても、西門家へも改めてご挨拶に行くわけだし、悩んだ挙句、春らしいサンド・ベージュの細ベルト付きワンピにして、そして、最後の仕上げ、胸元につけるネックレスをパールか可愛いガラスのハートにしようか決めかねていた。<br />
<br />
<b> ピンポーン♪</b><br />
<br />
『来た！』<br />
<br />
ドアを開けると、立っていたのはスーツ姿の西門さん。<br />
濃紺ストライプ細身スーツに白シャツ、光沢のあるロイヤルブルーのネクタイで若々しい華やぎがある。<br />
<br />
「うわっ、西門さんのそういう服装、初めて見たよ。<br />
パリっとしてるじゃん！」<br />
<br />
「まあな。」<br />
<br />
そう言いながら玄関に入ってきて、慣れた仕草で靴を脱ぎあがってくる。<br />
ちょうどいい所へやって来たと、手にしていた二つのネックレスを掲げて尋ねてみた。<br />
<br />
「ねえ、どっちのネックレスがいいと思う？」<br />
<br />
「う～ん、今日はハートだろ。」<br />
<br />
「うん、じゃあ、そうする。」<br />
<br />
タタッーと洗面所に向かい、鏡の前でネックレスをつけるのに格闘してると、ふわっと西門さんの香りがするやいなや、留め金をつかむ指先に自分とは違う指先が重ねられた。<br />
<br />
「つけてやるよ。」<br />
<br />
「あっ、サンキュー。」<br />
<br />
けれど、留め金を嵌め終わっても、離れなかったそのしつこい指先。<br />
うなじの上を滑るように行ったり来たり、だんだん大胆に動いて、肩より少し長くなった髪の毛を器用に払いのけ、細いうなじを露わにしながら、遊んでいるようだ。<br />
<br />
たかが２・３本の指先で弄ばれ、全ての注意を奪われている鏡の中の自分から目が離せずにいた。<br />
<br />
背後から寄り添う背の高い男は、さも大事そうに、愛しそうに私の首筋を見つめている。<br />
やがて、ゆっくりと鼻先を落とし、湿った口付けをその敏感なうなじに散らし始めた。<br />
<br />
「うわっ・・・/////・・////。」<br />
<br />
<br />
フェロモンバリバリの西門さんにそんな風に責められ、逃げられない自分を客観的に眺めながら、抗うことも出来ず立ちつくす鏡の中の自分、視線が固まったように動かず、なぜか強く惹かれ何かが疼き出す。<br />
初めて感じる艶かしい気分、それは胸の奥で赤みを帯びた小さな渦がクルクル回り、だんだん激しく揺さぶられるような感覚だった。<br />
<br />
「つくしちゃん？そんな自分も新鮮でビックリ？」<br />
<br />
「・・・っ！？」<br />
<br />
鏡の中の西門さんは、うなじに顔を寄せたまま視線だけ持ち上げ、からかう様にニヤリと笑うと、また再びうなじにキスの軌跡を落とし始める。<br />
反論しようのない自分にどう返事したらいいのか途方に暮れてしまうよ。<br />
<br />
「顔が赤い・・メチャ可愛い・・楽し～。」<br />
<br />
断片的に聞こえる小さな声は、肩にぶつかってこもり気味でなんだかセクシー。<br />
<br />
<br />
「はあ？？？ちょちょちょっと・・・ストップ！こういうの・・・反則でしょう？<br />
私は免疫無し女に等しいんだから、からかわないでよね。<br />
しかも、今日は大事な日なんだよ！」<br />
<br />
その場から勢いよく離れようとすると、西門さんの両手で身体をクルリと回され、反転されたままギューッと腕の中に閉じ込められた。<br />
<br />
「この一週間待ち遠しかったわ。<br />
はあ～、思い切り牧野の匂い嗅がせて。」<br />
<br />
<br />
西門さんって、愛情表現をこんなに素直に表せる人だったのかと感心している場合じゃなかったよ。<br />
耳の側で思い切り息を吸い込む音が聞こえた。<br />
<br />
「ええっ？私の匂い？何よ・・・コロンはつけてないけど、どんな匂いがする？」<br />
<br />
「それは、俺が気持ち良～くなる匂い。」<br />
<br />
「なんか、いやらしい。」<br />
<br />
「そのうち慣れるって・・・これは朝の挨拶でしょ。」<br />
<br />
<br />
ヒイエ～、西門さんと結婚したら、毎朝こんなエロ攻撃受けるの？<br />
いつでも発情してるオスと同居ってこと～？<br />
そりゃ、さりげない手口は日本人離れしてスマートっていうか、さすがだと拍手を送りたくもなるけどさ、毎朝、こんなのやられたらたまったもんじゃないよ。<br />
<br />
夜が明けて朝が来たら、新しい陽の光をちゃんと浴び、挨拶をして、さわやかに一日をスタートするもんだと決まってる！<br />
<br />
<br />
「ちょっと、西門さん！」<br />
<br />
「なあ、牧野～早く一緒に住もうぜ。<br />
俺、やっぱり、一日も待ちたくねえ～。」<br />
<br />
どこか大型猫科動物的な媚びを含んだ声、西門さんの声でありながら、私の気持ちを代弁しているようだ。<br />
その上、西門さんの指先が恋しく思う自分を素直に認めざるえない。<br />
<br />
相思相愛・・・そんな言葉が頭に浮かんで身体から力が抜けていき、手足の自由を塞ぐ事への注意や理想の朝一番とは？の調教、全ての文句は瞬時に萎えて、西門さんの胸にそっと頬を寄せた。</p>
<p>アパートの外には、西門家の黒いリムジンが待機しており、乗り込むやいなや、シートの上でガシッと手を握られた。<br />
西門さんの指は長くて、力強い。<br />
<br />
「それで、牧野のお父さんとお母さんはなんて？」<br />
<br />
「あっ、その話なんだけど、それがさあ・・・・。」<br />
<br />
３日前、実家のママへ電話した時の様子を伝えた。</p>
<p>３日前<br />
<br />
「もしもし・・・ママ？<br />
今週の土曜日なんだけど、パパとママに会ってもらいたい人がいるんだ。」<br />
<br />
「ええっ？あんた、彼氏がいたの？」<br />
<br />
「居たというか、急に出来ちゃったというか。<br />
でも、ずっと好きだった人だったから、結婚するつもり、それも、出来るだけ早くに。」<br />
<br />
「あらら・・・つくしが心に決めた人って誰なの？ずっと好きだった人って、もしかして、アンタ。」<br />
<br />
「うん、すっごいビックリすると思うけど。」<br />
<br />
「まさか？えっ、そうなの？いつの間にアンタ達、復活した？道明寺さんなんでしょう？」<br />
<br />
「ップ・・・違うよ、違うってば！道明寺とはきっぱり別れてるってば、もう～全く。」<br />
<br />
「じゃあ誰よ。<br />
昔からの知り合いってことは、ママも知っている人？花沢さんなの？」<br />
<br />
「ヤダ、もう～ママ、花沢類とは良い友達の関係だって何度も言ったでしょ？」<br />
<br />
「そうだったわよね、じゃあ。」<br />
<br />
「あのね・・・実は西門さんなの。」<br />
<br />
「ええええええーーーーーっっ！！！<br />
どうして？いつ・何がきっかけでそうなったの？ええっ？<br />
パパ～大変～、つくしが・・・つくしが・・・お茶の・・・あの・・ドウミョジさんのお友達の・・・。」<br />
<br />
電話の向こうでアタフタ意味不明になってしまったママの声。<br />
まあ、西門さんの事は時々看病に行ってる程度しか伝えてなかったし、驚くのも無理も無い。<br />
まだ自分だってこの展開に驚いている真っ最中なんだもん。<br />
<br />
「つくしか？つくしか？<br />
今聞いた話だがな、お・お・お相手は、道明寺様じゃないんだな？<br />
間違えるなよ、今度は西門様か？えっ？」<br />
<br />
「パパ、今度は！っていうの止めてくれない？<br />
私は間違えてないから、後にも先にも西門さんだけだよ。」<br />
<br />
「ふーん、そうか。<br />
そうか、そうか、つくし、良かったな、パパは嬉しい。<br />
ふん、それで、挨拶に来るわけだな？いつだって？」<br />
<br />
「今週の土曜日なんだけど。」<br />
<br />
「ええええええーーーっっ！<br />
また、つくしまでもそんな急に・・・まさか、お前たちはグルになって、パパ達で遊んでるんじゃないだろうな？」<br />
<br />
「はあ？何言ってるの、パパ？<br />
午前中には済むと思うんだけど、早ければ３０分かかんないかもしんない。<br />
都合悪いの？」<br />
<br />
「午前中か？なら、いいと思うがな～ママ～、つくしが今週の土曜日、午前中に西門様を連れてくるらしいぞ～。」<br />
<br />
電話の向こうで、また騒いでいる様子のパパとママ。<br />
<br />
「もしも～し、パパ？」<br />
<br />
「つくし？ママよ、午前中なのね、わかりました。<br />
ママ達も、そうしてくれると丁度いいかもしれないし。」<br />
<br />
「何？何が丁度いいのよ、どうしたの？」<br />
<br />
「いやね、進がね・・・まあ、会った時に話すわ。」<br />
<br />
そんな会話を交わしたのだ。</p>
<p>現在の実家は3LDKの賃貸マンションに移っていて、西門さんにとっては初訪問になる。<br />
部屋に入ると、パパとママは二人揃ってスーツを着こみ、少々緊張気味の面持ちで待っていた。<br />
<br />
「どうしたの？パパもママもそんなに張り切った洋服着て、普段着で良かったのに。」<br />
<br />
「いやいや～、どうだ、パパのスーツ姿も見てもらいたくてな。ふうん？どうだ？」<br />
<br />
「ママもパールのネックレスなんか出してきちゃって。」<br />
<br />
「まあね・・・こんな時くらいお洒落しなきゃね。<br />
あら、西門さん、こんな狭い所へようこそいらしてくださりました。」<br />
<br />
「大変ご無沙汰しております。」<br />
<br />
玄関で一礼する西門さん。<br />
さすがに美しい礼をする。<br />
<br />
パパはご機嫌な顔して、自分よりう～んと背の高い西門さんの肩をポンポン叩きながら、ニコニコと何度もウンウン頷いていた。<br />
<br />
西門さんはリビングのソファーに通され、一度はそこに座ったものの、お茶を出されるとおもむろに立ち上がり、床へと移動しそこに正座しなおした。<br />
<br />
といっても、残念ながら西門さんは事故の後遺症できちんとした正座が出来ない身体。<br />
歩くのは、よくよく見ると、左脚を引きずっているのがわかる程度で、日常生活には何の問題も無く、リハビリの成果が出ている。<br />
けれども、正座だけはどうにも無理のようだ。<br />
左脚だけほんの少し横に流れてしまう、着物だと隠れることだろうけど、体勢を変えるときには両手の支え無しに、座ることも立ち上がることも出来ない。<br />
西門さんは今でも、左脚を揉んだりストレッチしたり、改善を諦めてる訳ではないみたいだけど。<br />
<br />
両手で上手くフォローしながら正座をする、そんな西門さんを私は文字通り傍観しながら見つめていた。<br />
<br />
<br />
「お父さん、お母さん、今日はお願いに参りました。<br />
牧野つくしさんと結婚させてください。<br />
一生、大切にしますからどうか認めてください。」<br />
<br />
<br />
両親に向かって深々と頭を下げる西門さんは、まるで舞台で喋る俳優よろしく完璧だった。<br />
迷いの無いキッパリした、その男らしい挨拶を見ていると、胸の中はキュンキュンするし、クラッカーがパンパーンと鳴って、なんだかうるさいくらいの感動を覚えた。<br />
<br />
<br />
「こ・こちらこそ、よろしくお願いしますわ・・・・・・よ・よろしくね・・西門くん。」<br />
<br />
パパの方が舞い上がって、少々声が上ずっている。<br />
その後、私たちは両親に今までの流れを掻い摘んで説明し、途中、何度も驚嘆の声をあげられながらも、涙ながらに祝福をもらった。</p>
<p>「そうだったか・・・急な話だったから、ひょっとすると、お前たちも？と思ったけれどもな・・・先週、再会したばかりだったら無理だよな？なあ、ママ？」<br />
<br />
「もう、パパったら、娘の前でそんなこと。<br />
こんな失礼な義父で、ごめんなさいね、西門さん。」<br />
<br />
「いえいえ、楽しいお父さんで、僕も見習いたいです。」<br />
<br />
私は、口の上手い西門さんに、思わず噴出しそうになった。<br />
気が良くなったパパは、嬉しそうな顔のまま続ける。<br />
<br />
「つくし達は出来ちゃった婚じゃないってことだな？一応、確認、確認。」<br />
<br />
私と西門さんは顔を見合わせて、お互い小さく首を振った。<br />
<br />
「実はね、進がね、いきなり、結婚するって言うのよ。<br />
それも、赤ちゃんが出来たからって、突然。<br />
だから、この後、先方さんの御宅にご挨拶に行く予定で、パパもママもなんだかソワソワしちゃって・・・ほら、この格好もね・・ホホッ。」<br />
<br />
ママはそういって、ヘラヘラ笑った。<br />
<br />
「ええーーっ？進が結婚？<br />
相手はあのしっかりした・・・？」<br />
<br />
「それがまた違うのよ、ねえ、パパ？」<br />
<br />
「つくし、進はパパに似てモテモテの社交家だぞ。<br />
合コンで知り合った相手らしい。<br />
女の子を取っかえ引っかえみたいだったよな、なあ、ママ？」<br />
<br />
「そ～うなのよ、つくし、・・・ったく誰に似たんだか。」<br />
<br />
進は大学院を卒業後、総合研究機構へ就職し、男ばかりの職場で夜遅くまで働いていると聞いていたから、堅物だと思いこんでいた。<br />
<br />
「いつの間に我が弟までが、どこかの不良学生みたいに遊んでたなんて・・・ちっとも知らなかったわ。」<br />
<br />
横に座る西門さんを意味深にチラリと見遣ると、まるで「俺は合コンなんか知りません」という風情で、清廉潔白な仮面を被り、黙っているからなんだか笑えた。<br />
<br />
実家を後にし、西門家に向かう車中でその様子をからかってやると、「うるさい、緊張してたんだから、仕方ないだろ。」と拗ねられ、意外だった。<br />
<br />
「西門さんがうちに来て、緊張するなんて想像もして無かったよ・・・ハハハ。」<br />
<br />
でも、西門さんいわく、ああいう席で緊張一つしないのは、意気込みが足りないそうだ。<br />
<br />
<br />
その後の西門家は問題なく滞りなく大事な話しを終え、家元とお母様と一緒に夕食をいただいた席では、西門と縁のある神社で式を挙げることにし、早ければこの秋にでもと話が進んだ。<br />
なんて決め事に柔軟で、話の早い人達なんだろう。<br />
<br />
<br />
「牧野さん、総二郎のこと、よろしくお願いしますね。」<br />
<br />
<br />
お義母様からそう頼まれると、改めて西門さんと一生を共にするのだと実感して、これからは私が西門さんを支えていかなくてはとひっそり腹を括った。</p>
<p>再び乗り込んだリモ。<br />
長い一日の最後に向かう先は、夜景のきれいなホテルのラウンジ。<br />
二人だけで今日の記念に乾杯しようと西門さんの提案だった。<br />
<br />
<br />
「牧野、フィアンセのお前に贈る初めてのプレゼントなんだけど、受け取って。」<br />
<br />
渡されたのは白いリボンの付いたエメラルド・グリーン色の小箱。<br />
ずっと昔、ホワイト・デーにプレゼントされたあのバングルと同じブランドの箱で、遠い記憶が蘇る。<br />
<br />
「うそっ、私に？あけてもいい？」<br />
<br />
スルスル音をたて解かれた白いリボンが座席に滑り落ちて、いくつもの弧を描いた。<br />
中のケースを取り出し開けてみると、金ｘプラチナがスパイラル状に捻られている指輪が真ん中にチョコンと納まっていて、それはあのバングルと同じデザインみたいだ。<br />
ただ、その指輪には金ｘ銀二本の絡み合う弦に挟まれ、どうにも動けなくなったダイヤが存在感たっぷりにキラキラ輝いていた。<br />
<br />
「うわっ・・・すごいっ、綺麗・・・。」<br />
<br />
「気に入った？」<br />
<br />
「うん、勿論だよ、ありがとう。」<br />
<br />
西門さんは私の右薬指に指輪をはめて、ダイヤに小さなキスを落とす。<br />
指輪は計ったように私にピッタリで、私の指にとても似合っていた。<br />
<br />
つづく</p>]]> 
    </content>
    <author>
            <name>boa</name>
        </author>
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    <id>shinnjiteru.side-story.net://entry/70</id>
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    <published>2018-05-18T16:53:19+09:00</published> 
    <updated>2018-05-18T16:53:19+09:00</updated> 
    <category term="信じてる" label="信じてる" />
    <title>信じてる　７０</title>
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      <![CDATA[<meta http-equiv="Content-Style-Type" content="text/css" />
<title>shinnjiteru70</title>
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<p>70.<br />
<br />
いつもの部屋。<br />
いつもの朝食メニュー。<br />
<br />
違うのは、目の前で西門さんが機嫌よく食後のコーヒーを飲んでいて、我が身が少しくすぐったくて、火照ったようにけだるい事。<br />
<br />
男と女が狭いベッドで一夜を過ごし、一緒に迎えた朝だから。<br />
<br />
昨日が美作さんの結婚式で、再会したばかりの私達。<br />
なのに、この早い展開はさすが色男・・・いや、元色男？<br />
西門さんだから普通と言っちゃあそれまでなのだけど、私にとっては人生最大級ドラマティックな展開で、一夜明けてガラリと違った朝に感じる。<br />
<br />
天井から畳まで、幸福色に塗り替えられたような、世界を明るいフィルター越しに見ているような、全てが薔薇色、花びらに囲まれうっとりしている自分に酔いそうだ。<br />
<br />
昨夜の西門さんは私の緊張ごと包み込んでくれた。<br />
まずはゆっくり温め、丁寧に溶かしていった西門さん、あの場面を思い出すだけで赤面してしまう。<br />
<br />
それは西門さんと私が特別の関係にあるという確認であり、一つになれた時には私が女であることを痛烈に意識させられたし、西門さんを受け止められるこそばいような喜びが呼び起こされた。<br />
<br />
男女一対が手を携え求め合う行為は、行き止まりの無い神秘的なもの。<br />
受け止めてあげたいと、まさか女の方も積極的に思うものとは知らなかった。<br />
<br />
西門さんの手元を見つめ、まるできれいな甘いお菓子を味わう様に、ニンマリとぼんやり二人の未来を描きながら、ようやく訪れた甘い幸せを噛み締めている最中だった。</p>
<p>「なあ、牧野。<br />
いつから俺と一緒に住める？」<br />
<br />
「・・・（ゴクリ）。」<br />
<br />
「出来るだけ早く一緒に暮らそうぜ。」<br />
<br />
「ちょっと、待って。<br />
それって、同棲ってことだよね？」<br />
<br />
「まあ、そういうことだ。<br />
俺たち結婚する仲だし、どうせ一緒に住むんだから問題ないだろ？<br />
今さら、互いの両親が反対するとは思わねえ。<br />
なんなら、籍だけ先に入れてもいいし、牧野の好きなようにしていい。<br />
なっ？<br />
俺は明日にでも牧野を連れて帰りたい。」<br />
<br />
「えっ？西門さん、もう明日には京都へ帰っちゃうの？」<br />
<br />
「ああ、戻らないと。」<br />
<br />
西門さんはそういって、私の手に自分の掌を重ねた。<br />
<br />
「なっ？一緒に暮らそう。」<br />
<br />
「でも、そう簡単に仕事は辞められないよ・・・それに・・・。」<br />
<br />
グループ・キャップに持ち込んだ武士の生活企画の一端、スポンサーとの打ち合わせは今日の午後３時から。<br />
用意しているプレゼン内容が思い浮かんで、急速に現実的な事柄が目まぐるしく襲ってくる。<br />
<br />
「それに・・・何？<br />
しばらく仕事は、京都からの通いでも大丈夫なように俺から話つけてやる。」<br />
<br />
「止めてよ。<br />
西門さんに助けてもらわなくても、自分でちゃんと考えてやるから。」<br />
<br />
「自分一人で出来るんだな？<br />
じゃあ、早速、この後、役所へ寄ってくか？」<br />
<br />
「そうじゃなくて・・・そうじゃなくてさ、西門さんのところには絶対に行くけど、ちょっとだけ時間が欲しいの・・・気持ちを整理する時間みたいなもの。」<br />
<br />
「出たよ・・・牧野節。<br />
んで、どんくらいしたら整理できると思ってんの？」<br />
<br />
「わかんない・・・仕事に一段落ついて、これで気持ちの整理がついたと納得できるまでかな？」<br />
<br />
「そんなの待ってたら、お前、おばあちゃんになっちまうぞ。」<br />
<br />
「・・っんな、ならないわよ！すぐよ！すぐ！」<br />
<br />
「すぐってどんくらいか？って聞いてんだけど。」<br />
<br />
「わかんないわよ・・・気持ち次第だわよ。」<br />
<br />
「ハア～、一体、どんな気持ちの整理がいる？<br />
俺について来るのがそんなに不安？<br />
今の俺には自分の人生任せられない？」<br />
<br />
西門さんは可哀想なくらいがっかりして、大きな溜息をつく。<br />
私は思い切り、かぶりを振った。<br />
<br />
「西門さんは私に不釣合いなくらい立派な人で、すごい頼もしいと思ってるよ。<br />
そういう不安じゃなくて、なんていうか、昨日の今日のことで、ビックリしてるっていうのもあるし、なんだかこれって現実なのかなあ～？って信じられない所もあったりして。<br />
それにさ・・・あのぅ～西門さんって・・・鳥みたいでさ。」<br />
<br />
「はあ？鳥？」<br />
<br />
「・・・！」<br />
<br />
「お前、俺のこと、おちょくってんのか？<br />
そういや、昔、司のこと犬呼ばわりしてたよな。<br />
今度は、俺が鳥かよ？<br />
俺のどこに羽がついてるんだよ。」<br />
<br />
「あ・あ・あのさ・・・ごめん、気を悪くさせたんなら謝る。<br />
西門さんって、昔から近くて遠いイメージで・・・鳥みたいに何考えてんのかわかんないミステリアスなとこがあるからさ、そうそう・・・格好いいイメージなんだよ。<br />
道明寺みたいに単純馬鹿なイメージじゃないし・・・ハッハハ。<br />
だから、夫婦になるっていうのがピンと来ないっていうか、ちょっと・・・怖いっていうかさ。」<br />
<br />
「俺の奥さんになるのが怖い？それとも、俺が怖いの？」<br />
<br />
珍しく涼しげな目元はどこへやら、眉間に皺を寄せ詰め寄ってくる西門さん。<br />
<br />
「いや・・あの・・・怖いっていう表現はピッタシじゃなくって、付き合い期間なしで大丈夫かな？って心配なわけで・・・。」<br />
<br />
詰め寄られて、しどろもどろな答えになってくる。<br />
頭の中で、自分自身にもどうしたいのか問いかけながら答えてるからだ。<br />
<br />
「なら、なおさら離れてたらダメだろ、いつまで経ってもそのままだろうが。」<br />
<br />
さっきまで重ねられていた西門さんの掌が引っ込められ、１０センチ向こうに置かれると、なんだか手の甲が寒々しい。<br />
<br />
「ちょっと、タバコ買ってくる。」<br />
<br />
「・・・。」<br />
<br />
西門さんが皮ジャンをはおり、振り返りもせず、玄関ドアを開け外へ出てしまう。<br />
すると、とたんに部屋の中ががらんと味気なく見えた。</p>
<p>あーあ、怒らせちゃった。<br />
<br />
西門さんとようやく会えて・・・プロポーズだって、どれだけ嬉しかったか。<br />
イエスの返事は心からでた素直な気持ち。<br />
<br />
さっきまでこの世の春のように、甘い幸福感に浸りきり、西門さんをずっと信じていたのが報われたってニンマリしてたのに。<br />
<br />
「待たせて悪かった。」って強く私を抱き寄せて・・・約束もしてなかったのに、迎えにきてくれた西門さん。<br />
思いのほか、私のこと、一途に思ってくれていたんだよね。<br />
私も西門さんとずっと一緒にいたいと骨の髄から思ってるんだよ。<br />
<br />
でもね、西門さんのこと全部を理解しているわけじゃないから、自信がないんだ。<br />
いきなり結婚生活なんて、どうなるんだろう？<br />
一緒に暮らしたら、私の知らない西門さんがいっぱい出てくるような気がしてビビッてしまって、腹をくくらなきゃって思ったの。<br />
<br />
英徳ではすけこましのポーカーフェイス、その後は私の師匠で、全て承知してるような先生面と向き合ってきたわけで、長い間、完成された西門さんばかり見てきた。<br />
そりゃあ、弱い部分も少しは見た。<br />
でも、誰だってあんな事故の後じゃあ、一時つぶれて当たり前だ。<br />
<br />
実は、すっごい怒りんぼかもしれないし、すっごい甘えたかもしれないし、ケチンボじゃないだろうけど、ものすごい浪費家かもしれないし・・・ひょっとすると、まだ女と切れて無くて、ストーカー被害を受けてるかもしれない。<br />
<br />
この６年弱、音信不通で久しぶりに会った晩にプロポーズされ、妻として迎えられるって？もし、私の手におえなかったらどうするよ。<br />
<br />
さて、牧野つくし、どうする？</p>
<p>カチカチ・・カチカチカチカチ・・・<br />
<br />
時計の針の音がやけに大きく響いている。<br />
西門さんが出て行くと、とたんに針の音が耳について、残された静けさが寂しく感じる。<br />
<br />
一人でも、寂しくなかった部屋なのに、今は寂しい。<br />
早く戻って私のすぐ側に居て欲しい、わずか３０分の不在がこんなに長く感じてしまうなんて・・・タバコって、一体どこまで買いに行ったんだろう。<br />
<br />
<br />
『まさか、このまま会えなくなるってことないよね？』<br />
<br />
心臓がドクンとはねて、掌にじんわり汗がにじんだ。<br />
<br />
<br />
思うやいなや、居ても立っても居られず、玄関へ行きサンダルに足をつっこみ、鍵も持たず慌てて外へ飛び出した。<br />
階段を下りていくと、大きな黒いバイク、その横にこちらに背を向け立っている革ジャン姿の男、タバコの煙を吐き出しているすらりとした男が視界に入る。<br />
<br />
『良かった～。』<br />
<br />
鼻の奥が熱くなったけれど涙は出ずに、代わりにビックリするほど感じた安堵感。<br />
<br />
『良かった、居てくれて良かった～。』<br />
<br />
西門さんに触れたくて近づいていくと、サンダルの音に気付いた西門さんが振り返り、長い煙を吐き出した。<br />
少し苦そうに眉間に皺を寄せ、低い声でこう言った。<br />
<br />
<br />
「ん？どうした？何、泣きそうな顔して。」<br />
<br />
「・・・だって・・。」<br />
<br />
「俺がどっか行くかと心配になったんだろ？」<br />
<br />
素直に認めて、コクリと頷づくしかない。<br />
<br />
「行くわけないだろ・・・っふ。」<br />
<br />
「ずっと一緒にいようね。<br />
私には西門さんが必要・・・やっぱり、離れたら寂しいよ・・・。」<br />
<br />
涙腺はとうとう決壊し、涙がポロポロこぼれ落ちると、私は西門さんの胸に向って飛び込んで、そして腕を回してきつく抱きしめた。<br />
西門さんも腕を広げ、私を抱きしめ返してくれる。<br />
その力が私のよりもずっと強くなると、耳の側でメシメシッと革ジャンのしなる音が聞こえて耳に優しく響いた。<br />
<br />
<br />
「あぁ、懐かしい匂い・・・西門さんも、この皮ジャンの匂いも大好き。」<br />
<br />
「気持ちの整理とかはいいのかよ。俺のこと、怖いんだろ？」<br />
<br />
「私、ちょっとビビッてた・・・でも、考えたってどうしようもなく西門さんと居たいんだもん。<br />
仕事を片付けたら、すぐ行くから待ってて。」<br />
<br />
「俺と結婚したら、毎晩、三つ指ついて出迎えろって言うかもよ。」<br />
<br />
「・・・んな事言ったら・・・無視する。」<br />
<br />
「ひど、無視かよ、怖い嫁さんになりそうだな、牧野、ククッ。<br />
牧野が俺のことわからなくても、俺が牧野のことちゃーんとわかってるから大丈夫。<br />
上手く行くって・・・俺ら。」<br />
<br />
「うん・・・そんな気がしてきたよ。」<br />
<br />
「まっ、俺もちょっと焦りすぎたって反省した。<br />
でも、仕事片付けたら、マジですっ飛んで来いよ。」<br />
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「うん、こんな風にギュッとして貰いたいから、飛んで行く。」<br />
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腕の中で西門さんを見上げ笑いかけると、西門さんの瞳がとっても嬉しそうに笑ってて、見入ってしまう。<br />
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「そんな可愛いこと言うと・・・。」<br />
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朝っぱらから、家のど真ん前でキスされるとは思わなかったけれど、煙草の濃い匂いのキスは温かい味がして、きっと忘れられない想い出になると思った。<br />
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つづく</p>]]> 
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            <name>boa</name>
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