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1.
毎日カチカチ動き続ける時計の針のように、ただひたすら無心に進めればいい。
喜びや嬉しさだけ残して期待や満足が無くなれば、きっと楽に居られるはず。
だけど、繰り返される食(ショク)と寝(シン)がどんどん太らせていくんだ、私の胸に蔓延する不安を・・・。
『道明寺・・・』
英徳大学卒業式の一週間後、突然NYから帰ってきたあいつ。
道明寺財閥次期社長というプレッシャーを乗り越えたあいつは、声掛けることも躊躇されるくらい男として大きくなって帰ってきた。
世界経済の中心地NYでは、日本を背負う財閥の後継者だからといって、甘えが許されるはずも無く、
重ねてマイノリティーというどうしようもないハンディーを背負ってビジネスの門をくぐった道明寺。
若干22そこらの青年にとって、どんなに大変だったか想像するに余りある。
そして、いつのまにか目まぐるしく変る情勢にも肌が馴染み、少なからず影響を与えられることを覚えた時、一体どんな衝撃があったというのだろう。
私には、見当もつかない。すっかりビジネスの魅力に取りつかれた眼差しで、熱く語る仕事の話に、どう転んでも付いていけなかった。
結局、道明寺は私を置いてNYへ再び帰ってしまった・・・。
別れたわけではなく、もう少し待ってくれという言葉と明るい笑顔を残しタラップへを上る後ろ姿は、滋さんの島で私を求めてくれたあいつとは全くの別人だった。
何度も何度も蘇ってくるあの後姿・・・。
私は、あの瞬間からずっと、胸の中に煮え切らない漠然とした不安を抱えて過ごしている。
「牧野さ~ん、なにボーとしてるんですか?」
「あっ、平野さん、えっと、なんだったっけ?」
「3番に電話ですよ。花沢さんからです。」
「はい、ありがとう。回して。」
Trurururururu
「はい、牧野です。」
「もしもし、俺・・・。」
「類?お帰りなさい。もしかして、帰ってきたばっかし?」
「うん、そう。 まだ、空港にいる。例の物、渡したいから今晩あけてよ。」
「え~?ちょっと予定がきついんだけどな。 仕方ないな、私が頼んだものだしね。」
なんだかんだ言っても、類と話すのが好きだから予定を空けてしまうのは、いつからだろう。
つづく
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