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信じてる

西門総二郎x牧野つくし

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信じてる 2
shinnjiteru2

2.

花沢類とは、相変わらず付かず離れずの関係で、仲間で飲み会に行くのとは別に時々二人で食事しては、愚痴を聞いてもらっている。

「まだ、司に電話して無いの?」
「忙しそうだし、共通の話題がないんだもん。」
「牧野、意地張ってないで、会いに行ってきな。」

たまにかかってくる道明寺からの電話は、なんの予感もなくいつも突然で、簡単な近況報告をした後、ちょっとした沈黙があって、その後、たいてい道明寺が新しい話題を拾ってくる。

滋さんの島で見た道明寺の熱い瞳やはずむ息遣い、それから、手のぬくもりや広い胸はどんどん想い出の片隅へと姿をひそめ、代わりにどんどん大きくなる機体へ消えていった背中。
道明寺と付き合っているという実感を、どうやったら取り戻せるのか考えても途方に暮れるばかり。


肝心な話題は棚にあげて何一つ話せてないのが、私らしくないってわかってる。
でも、突き詰めて話せば、絶対に修羅場になるだろうから、まだそこまで根性が座ってないというか・・・、出来れば避けたい。
道明寺は、私がこんな気持ちを抱えてること、気付いてるのかな?

「今のまきのは、昔のまきのと違うね。なんていうか、しおらしくなっちゃった。」
「それ、どういう意味? 昔は、じゃじゃ馬だったって言いたいわけ?」
「くくっ、じゃじゃ馬ねぇ・・まっ、俺は今のまきのも好きだからいいけど。」
「は?」
「あっ、そうだ。はい、これ頼まれていたもの。」ニコリと微笑みながら、一冊の本を差し出している。
「ありがとう。えっと、・・・、歌麿、歌麿っと・・あったよー。よかった、本当に助かったよ、類。

フランス国立ギメ東洋美術館には、日本からカンボジアとかまで色んな作品があったでしょ?作品の配置がフランスらしいって聞いたけど、どう思った?」


私は、フランス出張の類にギメ東洋美術館収蔵日本美術品を網羅した写真集を一冊買ってきてくれるように頼んでおいた。
というのも、出版社で配属された部署は、どういうわけか美術品についての著作本や雑誌を担当する部で、曲がりなりにも雑誌のコーナーを一つ任されている。


雑誌のターゲットは、人生に余裕のあるアッパークラスの人々。
彼らの飽くなき好奇心を満足させるべく世界中から美術品の名コレクションをピックアップして紹介しているのだ。


今回、喜多川歌麿の浮世絵をフォーカスしていて、ギメの所有する作品について詳しく知りたかった。

「茶室があってさ、総二郎にお茶立ててもらいたかった・・・。」
「なにそれ。」
「日本のものは、日本にあるのが一番しっくりくるって思うよ。」

フランスもアメリカも、飛行機で行き来できる便利な世の中だけど、やっぱり相容れない異質な土壌なんだよね。

「ねえ、類、道明寺はどうして日本へ帰ってこないのかな?」
「噂で、アメリカ全土にチェーン展開しているシアトル本社の中規模食品販売会社を吸収合併するって聞いたから、忙しいんじゃない?」
「忙しいんじゃ仕方ないっか。」
「まきの・・・。」


その後、類のリモで家まで送ってもらうと、アパートの前に、一台のバイクとオレンジ色に燃えるタバコすら美しい所作で操るすらりとした男の人の影が見えた。

「西門さん?」
「よぅ、牧野。 類と一緒だったのか。 お前、茶碗のことで聞きたいってメッセージ残してただろ?」
「それで来てくれたの? ちょっと待ってて、今開けるから。」
「おぅ。」
「類もあがってく?」
「あがってく。」

つづく

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