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信じてる

西門総二郎x牧野つくし

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信じてる 72
shinnjiteru72

72.  *後半部分、少しだけ性的表現があります。苦手な方は、スルーして下さい。


隅田川にほど近い、大都会の中心にそびえるモダンでスタイリッシュなホテルだった。

西門さんに手を引かれ、吹き抜けのロビーに入ると、西門さんは私を残しフロントへ直行し、チェックインを済ませた。
そして、視線で私を呼び寄せ、肩に手を置き、エレベーターまでエスコートする。

磨き上げられた黒い床も、ロビーに並ぶえらく大きく角張った白い革ソファーも、フロントを照らす間接照明も、この男の背景に憎らしいほど似合っていて、絵に描いたように溶け込んでいる。
そんなスマートな男性(ヒト)に手を引かれるのは鼻が高く、自分がモデルにでもなったかのような勘違いを呼び起こしてしまう。

私たちを乗せたエレベーターの箱は、ホテル独特の優しい二連音を響かせ、揺れることなく静かにラウンジ階で止まった。
私の横にはピタリと西門さんが張り付いて、ボディ・タッチはいよいよ遠慮がなくなってきた。
端から見ればお熱いご両人、今や、その手は堂々と腰に回され、さりげなく腰骨や臀部をさすり、以前の私なら絶対黙ってられなかったスキンシップを繰り返してくる。

それがどうしたことか、ちっとも嫌に思わないで、雲の上を歩いているみたい。

非日常的な場所と婚約を決めたばかりの特別な一日。
そんな条件下、他人の視線は気にならず、むしろ、触れられる箇所から幸せな気持ちがジワーっと広がり嬉しく思えた。

勝手な妄想にせよ、まるで世界中が自分達を祝福し、温かく見守っているかのように、何も遠慮する必要ない奇妙な錯覚に陥っていたのかもしれない。

シンプルにとても幸せな気分だった。

さすがに24Fからの眺望は美しく、何といっても東京タワーが圧巻だった。
すぐ目の前をオレンジ色に発光しながら、存在をアピールする巨大オブジェ。
こんな素敵な夜景を見れば、ロマンチックな夜に誰でも乾杯したくなるだろう。

西門さんはスマートに私の座る位置を指し示す。
この歳になって、今さら過去に嫉妬するのは無粋だし、百戦錬磨のモテ男相手にそりゃキリ無い話ってもの。

けれども、優しく扱われ、こんな風に女心をくすぐられると、絶好調に満たされている瞬間でさえ顔を出してくる生来の性質、自信の欠如・・・独り相撲とわかっていても、辿ってしまうこのバカな思考回路なのだ。


もっと美人でスタイル抜群の女性の方が、この場所にも、そして西門さんにも、ずっとふさわしいんじゃないのかな?

きっと西門さんは、それを聞くと怒る。
西門さんに吐き出すことは、西門さんを不快にさせ、貶(おとし)めることを意味すると知らないほど、青っちい年齢でもない。

でも、こればかりは改善ゼロ、自然に出てくるのだからどうしようもない。
天下のF4相手だもの、無意識にそう巡ってしまうのは無理ない話かもしれない。

一人勝手に素敵な女性と比較し落ち込んで、何やってんだろ。
どうしようもないね、私の悪い癖。

「牧野、何飲む?」

「ジンライムを。」

「了解。」

やがて、手元にやってきたお酒で乾杯し、一日を振り返った。
両家の話から未来の話へと続き、約束を交わしたばかりの二人にぴったりの会話。


「秋なんかすぐ来るだろうし、それまで恋人期間楽しもうぜ。」

「うん・・・楽しもう。」

「じゃあ、海でも行くか?」

「海?どこの海?」

「ハワイでもニュージーランドでも、どこでも。」

「バカ・・・そんなの新婚旅行みたいじゃない。」

右手におさまる指輪をいじりながら、返事を返す。
見れば見るほど、素敵な指輪だと思い見つめていた。

「気に入った?それ、やっぱ牧野に似合ってる。
俺の目に狂いなし!サイズもドンピシャだったろ?」

「ホントに西門さんはプレゼント上手なんだから・・・どんな物が似合うか、想像できるんでしょ?」

「だから、牧野のことはわかるって言ったろうが。」

「質問なんだけど、こういう・・・指輪、何回も買ったことあるわけ?」

「おいおい、なんだよ、突然とがった質問かよ。
お前、何かすっごい勘違いしてない?
俺、指輪を選んだのも、プレゼントするのも、初めてなんですけど。」

「うそだよっ、そんなの?!」

「ホ・ン・ト。
指輪は危ないだろ・・・勘違いされちゃあ、たまんないしな。」

「私だけに?今までたくさんの女性(ヒト)と付き合ってきたじゃない。」

「牧野、お前は全然わかってないんだな~ハア~。
女に渡すプレゼントなんて、指輪以外にもいっぱいあるんだぜ。
指輪は特別!特別なだ~いじな女に贈るもんだろ?
そんなのその辺のガキだって知ってる。
あきらだって、好きな女からねだられても、指輪は贈ったこと無いはずだぜ。
いつか、聞いてみ。
そんなヘマする奴は、女に振り回されてるバカな男だけ。」

そう言って、背もたれに身体を預け、下から睨むように見つめてくる。

「うわっ、西門さん、あいかわらず、強気な発言。
でもさ・・・西門さんなんだもん・・・・・・。」

迷子になったような幼子のような声でそう返す私。

「俺だから?」

「西門さんだから・・・何でも一通りやってそうなんだもん。」

すると、西門さんは右手で拳を作り、心臓を二・三回立て続けに叩く仕草を見せた。
ネクタイの上をドン・ドン叩く音が響いても、何ともなさそうな胸板らしい。

「あんなぁ、言っとくけど、お前だけなの、ここにドーンっと入って来た奴は。
俺のこと、スケコマシとか思ってんのは仕方ねえかもしれねえけど、その辺の分別はちゃんと有りますから。」

その目は真剣で、少し怒ったような色で私を見つめていた。

「牧野、行こう。」

「はあ?」

「もう、じれったいから・・・行こうぜ。」

そういって、席を立った西門さんは私の肘をつかんで引き上げた。

「えっ?でも、まだ来たばっかりだよ。」

「喉は潤っただろ?」

頷き終わるのも待てない様子で、手を引かれ、すぐにその手は腰へと回された。

エレベーターに乗り込むと、箱は更に上へ上へと上昇した。


部屋の重い扉が閉まるなり、野獣さながら襲い掛かってきた男。
性急に落ちてきた口付けは今までにないほど激しくて、いっぺんに胸を焦がされ、火傷するくらいグラグラ熱く煮える欲情の釜へと真っ逆さまに落とされていくような気がした。


「にし・・かどさん・・・。」

「牧野、今からしっかり教えてやる。
お前が不安に思うことなど、一切ないって。」

私の両耳を覆うように大きな手で顔を挟まれ、我が身は壁にピタリとくっつきこれ以上後退する隙間なし、西門さんの怒気を含んだ覇気に押されまくり、もう受け止めるしかない状態だ。


キスの激しさと比例して、もみくちゃになる髪の毛。
大きな男の両掌は私の心を囲い込み、軟化させ変形させていく、そして、大きくこじ開けられた口腔内では、西門さんの舌が縦横無尽に動き回り責めたてる、変形されたまま何もかも全てが西門さんの肺の中へ吸い込まれていくようだった。

そうなっては、ドア付近で響く拗音も恋人達を扇情する音にしか聞こえず、早くも西門さんの左手は胸の膨らみへと落ち、服の上から無遠慮に揉み始める。
キスをしたまま、続いてもう片方の膨らみも同時に揉まれ、私は貼り付けられたように身動き一つ出来なかった。

そして、西門さんは何を思ったのか、急に腕を背中に回し私を抱きしめ、大きな溜息ともとれる声をもらした。

「・・・・はぁ。」

顔は見えない。
けれども、思いつめたように頑なに力いっぱい掻き抱いているといった感じで、私は今にも肋骨がポキポキポキっと音をたて、何本か折られてしまうのではないかと心配になった。


「折れちゃうよ。」

「ごめん・・・。」


男の人って、まるきり違う種類の、切れるような腕力を持っている。
西門さんらしくない加減で驚いたけど、少し力を入れただけで、瞬時にあんな風に抱きしめられた。

腕を解き、力が抜けると、私の高さに合わせるため、前屈みになった西門さんは真顔で顔を寄せてくる。

「俺・・・こんなにマジ惚れしたの初めてだから、この先どうなるか見当付かないけど。
牧野のこの目・口・鼻・・・・この身体・・・声も中身も・・全部好き。
今まで出会ったどんな女のよりずっといいと思ってる。
だから、牧野は俺を信じてついてくればいい。」

「西門さん・・・それは、言いすぎ・・・十人並みだもん。」

「いいや、光って見えて仕方ねえな。」

そういうと、ニヤリと笑い、私の手を取って部屋の奥へと促した。

つづく

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