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信じてる

西門総二郎x牧野つくし

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信じてる 11
> shinnjiteru11

11.

私は再び、東京の忙しい日常生活へ戻った。

とうとう、道明寺に言ってしまった。
けれども、NYで道明寺に会って感じた違和感を言葉に出した事で、自分にも道明寺にも、どんな内容であれ正直でいることができ、ホッとしているのも事実。

そんな私を優紀が居酒屋へ誘ってくれて、今日は飲み明かす事になっている。

「・・・それで、そのあと、道明寺さんとは会えずに戻ってきたの?」
「ううん・・・、帰る日にJFK空港に見送りに来てくれて、少し話した。・・・。」
翌日も帰ってこなかった道明寺が、空港に姿を現した。
あの晩のことを最低だよな・・・と心から謝る姿はまるで生気がなかった。
そして、「ずっと不安にさせて悪かったな・・・」とそれは初めて耳にする静かな声音で・・・。


丸一日頭を冷やして、私の言ったことを理解しようと努力してみたけれど、もう少し時間がかかりそうだと口角を上げながら不甲斐なさそうに言う道明寺。

眠らなかったのだろう、目元には疲労の陰が濃く浮かんでいるのに、ドキッとするくらい優しくて大人っぽい笑顔の道明寺が焼きついている。

別れ際、「また、会ってくれるか?」と聞かれ、もし日本へ帰ってきたら連絡してと答えた。


お互いそれ以上交わす言葉が見つからなかった。

「道明寺さんが、そう言ったの?すごいね、全部飲み込んでくれたの・・・?」
「よくわからない・・・。でも、NYに行ってから、初めて仕事ズル休みしたって笑ってた。
あのさ・・・離れていなければ、今の道明寺も自然に受け入れられてたのかな?」
「つくし・・・。
私達の年代って、価値観や物事の考え方が周りの影響を受けやすい年代でしょ?
例え、一緒にいても、何も変らない保障は無いと思うよ。
道明寺さん、きっと無理してたんだろうけど、つくしの気持ちを大事に考えてくれたんだね。現状をちゃんと見つめれる道明寺さんって、やっぱり大人だな・・・。
要は、つくしに笑顔でいて欲しいんだよ・・・!もちろん、私もそう思ってるからね。」
「うん・・・ありがと。」

丸くなったあいつが見せた優しい表情は、過ぎていった時の流れを感じさせ、無性に私の心を苦しくさせるのと同時に、一片の寂寞感を感じさせた。
その晩は、予定通り二人で酔いつぶれるまで飲み明かした。

会社までの銀杏並木は、すっかり芥子(からし)色に染まり、道行く人々に秋の風情を運んでいた。
時差ぼけが解消されたのと、このカラリとした秋晴れのお陰で、視界が一段とクリアになり頭も冴えてくる。

仕事の段取りを考えながら歩いていると、メールの着信音・・・♪。

『 まきの、お帰り 』

ふふっ・・・、類からだ。

たったこれだけのメッセージなのに、気持ちが伝わってくるのが不思議。
うちの雑誌の見出しを依頼してみたら、良いのを寄越してくれるかも・・・なんて。
忙しいのに、ありがとうね、類・・・。

類は、英徳時代のころが信じられないくらい多忙な人になっている。
花沢物産に入社した直後は、古参から受ける見え透いたおべっかと親のコネ入社と蔑視する視線の洗礼を受けた。

本人にとっては迷惑でしかなかったであろうが、それらを払拭するように集中するうちに抜群のキレが発揮され、
日に日に信頼を得、重要な仕事をこなすようになっているようだ。

そして、言わずと知れたあの容姿は『 花沢物産ジュニアービジネス界の王子様― 』と名打たれ、
某経済誌に掲載された。その号は、業界始まって以来の記録的売上を伸ばし、うちのキャップも羨ましそうに唸っていた。
婦人雑誌からの取材依頼をことごとく断っているらしいが、私のコーナーなら出てあげるって冗談でも言ってくれる。

心配しているであろう相手に、メールを返信した。

『 一件、落着ってところ・・・ ありがとう 』

携帯をパチンと閉じて、顔を上げ、会社へ向かって歩き出す。

芥子色に染まる歩道に沿って停まる一台のリムジンが目に入る。
歩道側の窓がスーッと下りて、後部座席に携帯を手にした類が優しい微笑みを浮かべていた。

「お早う、牧野。」
「類、お早う。 ずっと、見てたの?」
「牧野が見えたから、停まってもらって眺めてた・・・。
朝からニヤケる牧野もおもしろいね、ククッ・・・」
「/////// ちょっと、私で遊ばないでよね!まったく・・・」
「クククッ・・ごめん・・・。案外、元気そうでよかった。」
「うん・・・自分でも意外な程、何も変らないよ。あっ、ちょっと気持ちが軽くなったかな・・・。」
「ふーん。」 薄茶の瞳が、真偽を見極めている。

歩道には、類と私が親しげに話す姿を見つけて、野次馬根性で歩みを緩める人がパラパラ出てきた。
「じゃあ、類、もう行って! また、連絡するね。」
変な噂でもたって、類に迷惑はかけられない。
忙しい類が、今日一日元気にお仕事できるように明るい笑顔を見せた。

とたんに、他人にはめったに見せない笑顔を返す類。

振り返って、朝の光をキラリと反射させ走り行くリムジンを見送った。

つづく

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