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信じてる

西門総二郎x牧野つくし

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信じてる 4
shinnjiteru4

4.

進が初めて彼女を連れてくると大騒ぎするパパとママに呼び出されて、ひさしぶりに実家へ行った。
現在、私は家を出てるから、パパ・ママ・進の三人で暮らすアパートだけど、やっぱりあいかわらず狭い。

進の彼女は、想像と違ってとてもハキハキした娘だった。どちらかというと守ってあげたくなるような大人しい女の子が好みだと思い込んでいたので、
なんだか戸惑っているうちにきれいなお辞儀をしてくるりと背を向け、進に微笑みかけるあの娘に置いていかれた気になる。

「つくし、あんた、道明寺さんとうまくいってんの?」
ふいに、ママに痛いところをつかれ、口ごもる私。
「NYへ行ってしまったんだから、この際花沢さんに取っ替えたら?」
「この際ってどの際よ~、ママ、冗談でもそんなこと言わないで。まったく・・・。」
「冗談だわよ~、何本気で怒ってるの?道明寺さんを大事にしなさいよぉ!あんな三拍子そろった人は他にいないわよ。」

帰り道、ママに言われたことを思い出しながら、バスに揺られていた。
真っ暗になった風景を見るつもりが、窓に映った自分の顔に視線が止まり吸いたように離れなかった。

窓には私の顔がくっきり写っているのに、黒い影でよく見えない表情が誤魔化し続けている私の心とぴったり重なっているように見えたからだ。

『今夜は、道明寺に電話しなくちゃ・・・。必ず・・・。』

Trurururuuruu・・・・・ trururururuuru・・・・・・

カチャ

「まきのか?」
「あっ、道明寺? ごめん、まだ仕事中だよね。」
「いや、構わねえよ。どうした?何かあったのか?」
「ううん、別に何も・・・。あ・あのさぁ~、元気?」
「あぁ・・・、元気だ。お前から電話くれるなんて、今日は槍でも降ってくんじゃね?」
「槍って・・・あんた。言うなら、雨にしてよ・・・。」
「じゃあ豪雨ってとこだな。」

それから近況報告をした。

花沢類が言ってたとおり、道明寺はアメリカの食品会社を吸収合併するのに忙しいらしく、語学と経済の勉強をしつつ寝る間も惜しんで働いているそうだった。

「お前、夏こっちに来れないか?」
「まだ新米だから、夏休みの予定はわかんないよ・・・。」
「それぐらいどうにでもなるだろうが・・・。おっ、わりぃ~時間だ。
お前、きょときょとするんじゃねえぞ! 電話ありがとうな。」
道明寺の笑顔が見えるようだった。
言い合えたのが懐かしかったけど、充実した仕事の話を聞いてもBGMのように聞こえて、何を置いても私だけを求めてきた男の姿はもうどこにもなく、
これが社会人になるという事なのだろうか・・・と納得できる答えを探そうとした。

私だって、今は出版社で働いて担当までもらっているから、簡単に休めるわけない。

道明寺は、私が働いてる姿を見たこと無いんだもんな・・・。

携帯を見つめていると、けたたましく携帯の呼音が鳴った。
発信者は西門さんだった。

「はい、もしもし・・・」
「よぉ、俺。起きてたか?」
「うん、目はパッチリだよ。」
「こないだの原稿の話、受けるわ。」
「ほんと?よかったー。」

たちこめた霧の中に、細く明るい光がサッと差し込むようだった。
なんの根拠も無いけど、全てが良い方向に行くような気がして、笑顔になる。

「西門さん、本当にありがとう!」
「なんだよ、まだ書いてねえぜ・・・。」
「どんなレイアウトがいいかな・・・?早く読んでみたいな、楽しみだよー。」
「くくっ、牧野にそんなに喜んでもらえたら、お兄さんは嬉しいよ。つくしちゃんからの報酬、期待していいの?」
「は?だから、少しだけど会社から・・・。」
「なんなら初めてを捧げてくれるとか・・・?」
「///// 何、言ってるのよ、もぅ!!!」
「やっぱし、まだだったのか・・・。だから、お前ら不安定になるんだよ。
いい年した男女のすることといったら一つだろうが・・・。それで、喧嘩の仲直りができることもあるし、つながりが深まって安心することもある。」

道明寺とそんな関係になったらその後どうなるんだろう・・・って考えなかったわけじゃない。
もし、道明寺がNYへ行く前にちゃんと抱かれてたら、私の体がもっとあいつを恋焦がれてたのかもしれない・・・。抱かれるってそういうことかもしれない。
その手のことは、やっぱり西門さんが言うとおりなんだろうな。

せっかく晴れたと思ったのに、再び霧がたちこめアパートの空気が重くなった気がした。
部屋の空気が変ったことなど関係なく、ベッドの目覚まし時計はカチカチと小気味よく時間を刻み続けている。


私の感なんてあきれるほどあてにならない。良い方向へ行くなんて、全くの気のせいだと叩きつけられることになるとは、まだこの時は想像もできなかった。

つづく

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